休みの日。
ピアノを弾いてたら、つい夢中になって、気付いたらもう午後3時。
小腹が空いたなーって思いながらリビングに行くと、彼がソファで丸くなってた。
肩が小刻みに震えてるから、最初は笑ってるのかと思ったのに。
顔見たら泣いてるじゃんか!
なになに、どうしたの?
「あー、今さ、携帯小説っての読んでたんだよ。
したらさ、冒険で友達失う話があってさ」
ティッシュ持って隣に行く。
彼が鼻をかむ間、涙を拭いてやる。
なんか最近よく泣く。
笑ったり泣いたり、感情を全然隠さなくなったのは、安心してるからなんだって思う。
嬉しいな。
「なんか、オレ、オマエを失ったらどうしようって思ったし……」
「そうなったら、それでもちゃんと、他のメンバー達と元気に生きていかないとね」
せっかく拭いた涙がまた溢れてきた。
「うん。
絶対そうする」
濡れた目のまま俺を見つめてくる。
「だけど、そんなの、オレがかわいそうだって思わない?」
「えー、そんな事になったら俺のが可哀想だよ。
大切な人が、よぼよぼのお爺ちゃんになるのを見届けられずに、独り寂しく旅立つんでしょ?
仕方ないからオバケになってふよふよ漂うんだけど、絶対俺がいるのに気付いてもらえないよね?
そんで新しい恋人作るの見届けなきゃなんないんだから」
「……そっか。
それは考えつかなかった。
てゆうか、オマエもさ、オバケになってそばにいるんなら、ちゃんと気付かせろよ!」
「気付かせたくたって気付かないくせに。
絶対こわくて、わあわあなるでしょ」
「そんな事ない。
オマエなら絶対こわくないから」
もう新しい涙は出て来ない。
丸まった体を起こして抱き寄せる。
素直に俺の胸に寄り添ってきた。
頭を撫でながら、頭にキスする。
シャンプーの良い香り。
「オマエが女の子だったらな」
腕の中から出てきた突然の言葉に心底ビックリした。
「そしたら死ぬ前に子ども産んでもらって、その子とふたりで生きてける」
「え、待って。
それは逆じゃないの?
なんで俺が産む方なの?」
「えーだってオレ、あんな痛そうなの絶対無理だもん。
いいじゃん、産んでくれたって。
育てるのはちゃんとオレが」
黙らせたいからキスした。
毎回発想が無茶苦茶。
キスに応えてくる感じで、うっとりしてるのが伝わるから、俺も熱心に吸い上げた。
だんだん熱い気持ちになってきたから、唇を離して、
「女の子が良かったの?」
って小さい声でつぶやくように聞いてみる。
「んなわけないだろ……」
って、すっかり甘くなった声で俺に触ってくるから、腰の辺りがギュンってなる。
「オレがどんだけオマエを好きか知ってるくせに」
うんうん、知ってるねぇ。
ほくほくしながらちょっと意地悪く
「俺じゃなくて、分身が好きなんじゃないの?」
って言ったら、案の定ムキになった。
「バッ…オマエのだから好きなんだろ!」
バカって言いかけたよ、この人(笑)、ほんと楽しいなぁ。
「女の子だったらコレ持ってないけど?
いいの?」
「いいよ、オマエならいいよ。
ガマンする」
「へー。
じゃあ触るのやめなさいよ。
女の子には付いてないんだから」
真っ赤になった。
「やっぱやだ、ウソ!
男の子のままでいて」
あーもう、可愛くてどうしよう?
反則、反則!
存在が反則!
俺達は下を脱いだ。
彼を抱き上げると、俺をまたいで座ってくる。
向き合ったままキスをする。
俺はシャツの中に手を入れて、焦らさずに乳首に触れた。
いつもなら、ゆっくり後ろを解すのに、なんだか今日は余裕がない。
雨が降り出したのも気付かず、激しく求めてしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。