第33話

雨の日 B(再録)
52
2021/11/25 19:09





休みの日。

ピアノを弾いてたら、つい夢中になって、気付いたらもう午後3時。
小腹が空いたなーって思いながらリビングに行くと、彼がソファで丸くなってた。
肩が小刻みに震えてるから、最初は笑ってるのかと思ったのに。
顔見たら泣いてるじゃんか!

なになに、どうしたの?


「あー、今さ、携帯小説っての読んでたんだよ。
したらさ、冒険で友達失う話があってさ」


ティッシュ持って隣に行く。
彼が鼻をかむ間、涙を拭いてやる。
なんか最近よく泣く。
笑ったり泣いたり、感情を全然隠さなくなったのは、安心してるからなんだって思う。
嬉しいな。


「なんか、オレ、オマエを失ったらどうしようって思ったし……」


「そうなったら、それでもちゃんと、他のメンバー達と元気に生きていかないとね」


せっかく拭いた涙がまた溢れてきた。


「うん。
絶対そうする」


濡れた目のまま俺を見つめてくる。


「だけど、そんなの、オレがかわいそうだって思わない?」


「えー、そんな事になったら俺のが可哀想だよ。
大切な人が、よぼよぼのお爺ちゃんになるのを見届けられずに、独り寂しく旅立つんでしょ?
仕方ないからオバケになってふよふよ漂うんだけど、絶対俺がいるのに気付いてもらえないよね?
そんで新しい恋人作るの見届けなきゃなんないんだから」


「……そっか。
それは考えつかなかった。
てゆうか、オマエもさ、オバケになってそばにいるんなら、ちゃんと気付かせろよ!」


「気付かせたくたって気付かないくせに。
絶対こわくて、わあわあなるでしょ」


「そんな事ない。
オマエなら絶対こわくないから」


もう新しい涙は出て来ない。
丸まった体を起こして抱き寄せる。
素直に俺の胸に寄り添ってきた。


頭を撫でながら、頭にキスする。
シャンプーの良い香り。


「オマエが女の子だったらな」


腕の中から出てきた突然の言葉に心底ビックリした。


「そしたら死ぬ前に子ども産んでもらって、その子とふたりで生きてける」


「え、待って。
それは逆じゃないの?
なんで俺が産む方なの?」


「えーだってオレ、あんな痛そうなの絶対無理だもん。
いいじゃん、産んでくれたって。
育てるのはちゃんとオレが」


黙らせたいからキスした。

毎回発想が無茶苦茶。

キスに応えてくる感じで、うっとりしてるのが伝わるから、俺も熱心に吸い上げた。
だんだん熱い気持ちになってきたから、唇を離して、


「女の子が良かったの?」


って小さい声でつぶやくように聞いてみる。


「んなわけないだろ……」


って、すっかり甘くなった声で俺に触ってくるから、腰の辺りがギュンってなる。


「オレがどんだけオマエを好きか知ってるくせに」


うんうん、知ってるねぇ。
ほくほくしながらちょっと意地悪く


「俺じゃなくて、分身が好きなんじゃないの?」


って言ったら、案の定ムキになった。


「バッ…オマエのだから好きなんだろ!」


バカって言いかけたよ、この人(笑)、ほんと楽しいなぁ。


「女の子だったらコレ持ってないけど?
いいの?」


「いいよ、オマエならいいよ。
ガマンする」


「へー。
じゃあ触るのやめなさいよ。
女の子には付いてないんだから」


真っ赤になった。


「やっぱやだ、ウソ!
男の子のままでいて」


あーもう、可愛くてどうしよう?
反則、反則!
存在が反則!


俺達は下を脱いだ。
彼を抱き上げると、俺をまたいで座ってくる。
向き合ったままキスをする。
俺はシャツの中に手を入れて、焦らさずに乳首に触れた。
いつもなら、ゆっくり後ろを解すのに、なんだか今日は余裕がない。


雨が降り出したのも気付かず、激しく求めてしまった。




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