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第18話

望みを叶えたい
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2021/09/08 04:00
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
あれ?
いつ眠ったんだっけ……?

蝶子が目を覚ますと、ベッドの中。


外は朝日が昇っている。


ヨウの腕の中で気を失ってしまうまで、泣いていたことを思い出し、頬に残る涙の跡を拭った。
ヨウ
ヨウ
蝶子、おはよう
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……おはよう

ヨウがエプロンを着けた状態で、部屋に入ってきた。


とても優しい顔をして、蝶子の頭を撫でる。
ヨウ
ヨウ
朝ご飯、作るけど食べる?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……食べる
ヨウ
ヨウ
分かった

昨日のことは何も言わず、ヨウは笑って部屋を出て行く。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
(泣いてばかりじゃいけない……。
私がいなくなった後に、ヨウを保護してくれる人を見つけないと)



***



処方された薬は、眠気と胸焼けの副作用はあるものの、驚くほど症状を抑えてくれた。


ただ、これは症状を抑えるのみで、根本的な治療はできない。


心配するヨウには「研究してた方が気が紛れる」と言って、蝶子は研究に戻った。
研究員
研究員
蝶子さん、もう大丈夫なんですか?
研究員
研究員
みんな心配してましたよ
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
すみません。
ご心配おかけしました

研究チームのみんなは、蝶子の復帰を喜んだ。


ヨウも、蝶子の気持ちを尊重して、病気のことは言わず普通にしている。


蝶子は研究の合間を縫って、ヨウには内緒で、新たにヨウを託せる相手を探した。


が、いかんせん学生時代に交友関係を築いてこなかったため、仕事で関わるくらいの相手しかいない。


全員に、事情を話すわけにもいかない。


こんな時に頼れるのは、栄一だろう。


しかし、彼とハナの邪魔をするのも、2人の関係を見てヨウが不遇を感じるのも、蝶子の望むところではない。


それに、ヨウはもしかすると、蝶子の死後はひとりで生きていきたいと思うかもしれない。


今のヨウなら、自力でいい人を見つけて、一緒に生きていく可能性もある。


何かあれば、国や研究チームがヨウをサポートしてくれる。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
(あれ?
そうすると、私の存在意義って何だったんだろう……)

蝶子は、自分を追い詰め始めた。



***



蝶子は毎日、研究に没頭している。


ヨウは、そんな蝶子にどんな言葉を掛けたらいいかが分からず、困っていた。
ヨウ
ヨウ
栄一さん、ちょっと相談したいことがあります
鳳 栄一
鳳 栄一
よかった。
俺も聞きたいことがあって

夜、蝶子が自室で眠ったのを確認して、ヨウは栄一に連絡をとった。


栄一も蝶子の様子がおかしいと分かっていたが、何度聞いてもはぐらかされていたらしい。
鳳 栄一
鳳 栄一
蝶子の症状、過労じゃなくて、病気だろ?
ヨウ
ヨウ
……はい

栄一も独自に調べていたらしく、ヨウと同じ推測結果に辿り着いていた。
鳳 栄一
鳳 栄一
これは君が俺たちに教えたんじゃなく、俺が勝手に調べた結果だから、蝶子を裏切ったとかは気にしなくていい。
ただ、余命だけは……教えてくれないか?
ヨウ
ヨウ
……。
約2年、だそうです
ハナ
ハナ
そんな……!
ハナは信じたくないようで、悲鳴を上げて、両手で顔を覆った。


栄一も、悔しそうに歯を食いしばっている。
ヨウ
ヨウ
蝶子の気持ちを尊重したいんです。
蝶子が一番やりたいことを、今はさせてあげたい。
それで、いいんですよね?
鳳 栄一
鳳 栄一
ああ……。
まずは蝶子の気持ちが一番だと思う
ヨウ
ヨウ
そうですよね。
でも、それだけじゃいけない気もしていて……
ハナ
ハナ
何を言っているんですか!

栄一とヨウの意見が一致したところで、ハナが珍しく声を荒げた。
ハナ
ハナ
あと少ししか一緒に居られないんです!
研究よりも、2人の時間を大切にしてください!
ヨウ
ヨウ
ハナさん……
ハナ
ハナ
ヨウさんは今のままで後悔しないんですか?
私たちは、ただでさえ制約が多いんです。
今、我が儘にならなくていいんですか?
ヨウ
ヨウ
……!

ハナの言葉に、ヨウは決意を固めた。



***



翌朝、研究所に向かおうとする蝶子を、ヨウは引き留め、ゆっくりソファに座らせる。
ヨウ
ヨウ
研究所には、今日は僕も蝶子も休むって連絡した
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
なんで、勝手にそんな……

蝶子は目を丸くし、やや不満げな表情になる。


ヨウは黙って蝶子の隣に座り、彼女の双眸そうぼうを真剣に見つめた。
ヨウ
ヨウ
このままだと、蝶子が蝶子じゃなくなってしまう。
不安なんだ。
研究に集中してるのは、気を紛らわせるためだよね?
僕は、ずっと胸が痛い
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……。
不安にさせて、ごめんね

蝶子の目からは、大粒の涙が溢れた。


図星だったらしい。


ヨウは優しく蝶子を抱き寄せる。
ヨウ
ヨウ
蝶子を泣かせたいわけじゃない。
僕はただ、一緒にいたいだけ
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
でもっ……。
私がいなくなったら……ヨウはどうするの?
ヨウ
ヨウ
どうするって。
蝶子以外の人を好きになるつもりも、お世話になるつもりもない
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……!
ヨウ
ヨウ
蝶子は今、どうしたい?
全部、僕が叶える

蝶子の細い指が、ヨウの腕をぎゅっと掴んだ。


泣き止むのを待って、数十秒後。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
最後まで、笑っていたい

蝶子は、か細い声でそう答えた。


【第19話へ続く】