――時は過ぎ、2121年。
蝶子と栄一は高校を卒業し、揃って同じ大学へと進んだ。
同時に、蝶子は特例で、大学生でありながら祖父のいた研究チームに所属することとなった。
主に、夢咲博士の研究を引き継ぐ形で、学習型アンドロイドを担当する。
栄一も蝶子の推薦により、アンドロイドに関わるAIネットワークの研究チームへと所属した。
若い2人が、国家プロジェクトであるアンドロイド開発研究に参加したことは、全国的にニュースで取り上げられた。
蝶子と栄一は一躍時の人となり、慌ただしい日が続く。
蝶子と共に情報技術について学んでいたヨウは、また凄まじい早さでノウハウを飲み込み、蝶子をサポートしている。
現在は、蝶子の研究対象である学習型アンドロイドのプロトタイプとして、研究チームに所属した。
博士が残した自分の体を有効活用してもらいたいと、ヨウ自身が望んだのだ。
研究する側にもされる側にもなるアンドロイドは大変貴重で、ヨウの成長過程やそのAIのメカニズムは、研究員たちの興味の的となった。
各メディアからの取材が落ち着き、研究に集中する蝶子だったが、ヨウに施されたプログラムは複雑すぎて難航していた。
ヘッドギアに似た形のAI解析の装置を、ヨウは慣れた手つきで頭に着ける。
装着していても自由に過ごせる仕組みになっていて、ヨウはまた作業に戻った。
ヨウの、どこか人間くさいところは、他のアンドロイドに見られない特徴だった。
自我が強く、怒りや嫉妬などの暗い感情も露わにし、蝶子以外の人間には好かれようとしない。
これからの時代、もしかするとそういったアンドロイドも必要になっていくのでは、と研究員の中には言う者もいた。
より人間に近く、環境に柔軟に対応できるアンドロイド。
ヨウみたいな、人間との相互作用を引き起こす存在を、人類が求めるだろうと見越して。
蝶子の足元が、少しふらついた。
こめかみをおさえ、目を閉じる。
ヨウが席を立って駆け寄ってきた。
すぐさま蝶子を支えて、近くの椅子に座らせる。
他の研究員たちも、心配そうに様子を窺っていた。
このところ体調がおかしいことを、蝶子は自覚していた。
主な症状は、頭痛、めまい、息切れ、手足の痺れ。
ただの過労だと思ってあまり気にしていなかったが、それは次第に無視できない症状となって表れてきた。
【第17話へ続く】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。