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第14話

もっと一緒にいたい
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2021/08/11 04:00
翌朝、ヨウは蝶子より先に目を覚ました。


本当は、蝶子の部屋に来た時点でスリープモードは充分終えていたのだが、ヨウはどうしても彼女の隣で安心したかった。


まだ眠っている蝶子の頭を、軽く撫でる。
ヨウ
ヨウ
……よく寝てる

ヨウは微笑んだ。


蝶子と一緒にいると、安心する。


もっと一緒にいたい、という感情の正体が何なのか、はっきりと分からない。


蝶子に聞いてみたいが、なんとなく、はぐらかされるだろうという予想はしていた。



***



次の休日、蝶子が家で情報技術の勉強をしている間に、ヨウは散歩をすると言って出掛けた。


仕事をしたいのは山々だが、蝶子とは離れたくない。


世間一般の人が言うとおり、自分は不良品で、アンドロイド失格ではないかと思う。


感情を持て余し、ヨウが向かったのは栄一の家だった。
ハナ
ハナ
まあ、ヨウさん!

来客に気付いたハナが、門のところまで迎えに来てくれた。
ハナ
ハナ
ええと、蝶子様からは何も伺っていないはずですが……
ヨウ
ヨウ
蝶子さんには言わないで、僕ひとりで来たんだ。
栄一さんと話がしたくて
ハナ
ハナ
……分かりました。
何か事情があるんですね

ハナは快くヨウを屋敷へと上げてくれた。


栄一が怪訝な顔をしながらも、玄関で出迎えてくれる。
鳳 栄一
鳳 栄一
話って?
ヨウ
ヨウ
ええと。
ハナさんも、できれば聞いてくれると……
ハナ
ハナ
かしこまりました

客間でソファに腰掛け、ヨウは今の気持ちを栄一とハナに話した。


2人は一瞬顔を見合わせ、頷いた後、穏やかな笑顔になる。
ハナ
ハナ
それは、ヨウさんが蝶子様を〝好き〟だということですよ

ハナが先にそう言った。


ヨウも、今までの学習内容から、うっすらとそうではないかと思っていた。


ただ、確信が持てなかったのだ。
鳳 栄一
鳳 栄一
蝶子は君に言っていないみたいだから、話しておかないと
ハナ
ハナ
ええ。
ヨウさん、私と栄一さんは真剣にお付き合いをしています
ヨウ
ヨウ
えっ!
鳳 栄一
鳳 栄一
驚きの感情も、自然に出るようになったね

アンドロイドと人間が交際することはままあると、アンドロイド事業部の人々も言っていた。


ただし、「推奨はしない」とも。


その理由は、ヨウも既に知っている。
ヨウ
ヨウ
どうしたらいいですか?
アンドロイドは、人間を好きになったら、みんなどうしているんですか?

この気持ちを、アンドロイドたちはどう処理しているのか、不思議でたまらない。
ハナ
ハナ
素直な気持ちを、蝶子様に伝えてみては?
断られるかもしれないけれど、そうしないと、みんな前に進めません

ヨウの疑問に答えたのは、ハナの方だった。
ヨウ
ヨウ
僕の気持ちを素直に……。
もし拒否されたら?
ハナ
ハナ
断られたら、もう無理強いをしてはダメですよ。
嫌われます
ヨウ
ヨウ
きっ、嫌われたくない……

蝶子に嫌われる場面を想像するだけで、ヨウは身震いするほどだ。


栄一はハナの言葉に少しだけ笑い、ヨウを優しい瞳で見つめた。
鳳 栄一
鳳 栄一
蝶子も俺も、アンドロイドと人間の恋愛には否定的だった。
でも、ハナやヨウくんに出会って変わった。
蝶子はもう、そんなことは言わないと思う
ヨウ
ヨウ
え?
鳳 栄一
鳳 栄一
もし結ばれたとしても、互いに強い覚悟が必要だ。
それはきっと、ヨウくんも分かってるよな?
ヨウ
ヨウ
……はい。
ありがとうございます!

ヨウはいてもたってもいられず、栄一とハナに頭を下げ、屋敷を飛び出した。


全速力で蝶子のところへと向かう。




あの映画の男の人も、あの小説の女の子も、みんなこんな切ない思いをしていたのだ。


ヨウはやっと、物語の中の人々の気持ちを悟った。


そうして、恋が叶わなかった人たちのことも、ヨウは知っている。


【第15話へ続く】