無料スマホ夢小説ならプリ小説 byGMO

第12話

真剣交際の2人
596
2021/07/28 04:00
ヨウ
ヨウ
じゃあ、蝶子さん。
本当に、お世話になりました
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……うん。
おじいちゃんもきっと、喜んでるよ。
新しい仕事、頑張ってね
ヨウ
ヨウ
はい

その日の夜、ヨウは蝶子に礼を述べ、迎えの車に乗って帰って行った。




蝶子はまた、ひとりきりの生活に戻った。


静かになった屋敷の中は、以前よりも広く感じる。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
(痛い……)

ヨウが来る前と変わらないはずなのに、時折胸が痛んだ。



***



彼は、どの地域に派遣されたのだろうか。


ここから遠い場所なら、もう会える可能性は低いだろう。


うまくやっているだろうか、感情を芽生えさせたからこそ、落ち込むことが増えていないだろうか。


蝶子はヨウのことを考えて過ごすことが増え、学校の授業もほとんど聞いていない。
鳳 栄一
鳳 栄一
蝶子、蝶子……!

栄一の声で我に返り、蝶子は後ろの席の栄一を見た。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
えっ、何?
鳳 栄一
鳳 栄一
当てられてる
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
うそ

慌てて先生の方を振り返ると、軽く咳払いをされた。



***


鳳 栄一
鳳 栄一
授業中も上の空って……。
大丈夫か?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
栄一……

放課後になり、栄一が蝶子に声を掛けてきた。


蝶子が目に見えて弱っているので、心配してくれているらしい。
鳳 栄一
鳳 栄一
先生も蝶子が常に学年トップだって分かってるし、大学も決まってるから強く言えないだけで。
心証は悪いからな?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
うん……。
気をつけます
鳳 栄一
鳳 栄一
たまには、学校帰りに何か食べ行くか
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
パンケーキがいい……
鳳 栄一
鳳 栄一
はいはい

商業施設に向かい、以前4人で訪れた喫茶店に入った。


ヨウがパンケーキを美味しそうに頬張っていたところを思い出す。
鳳 栄一
鳳 栄一
ヨウくんがいなくなって、寂しい?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
寂しい……
鳳 栄一
鳳 栄一
珍しく素直だな
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
でもあれ以上一緒に居たら、手放したくなくなりそうで……
鳳 栄一
鳳 栄一
気持ちを押し殺したわけだ?

蝶子は頷いた。


その気持ちは、きっと栄一も理解してくれるはずだ。


もう笑われてもいいから、誰かに心の内を聞いてほしいと、蝶子は思っていた。
鳳 栄一
鳳 栄一
蝶子は、凄いな。
素直に尊敬する
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
何で? 笑っていいよ
鳳 栄一
鳳 栄一
笑えないよ。
俺は、自分の気持ちに正直になって、ハナに告白した
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……え?
鳳 栄一
鳳 栄一
俺たちは今、真剣に付き合ってる

突然のカミングアウトに、蝶子は息を止めた。


もしかしたらこうなるかもという予想はしていたが、あの栄一が理性的な判断を捨てるとは信じられないのだ。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
栄一は、考えが変わったの?
アンドロイドが恋愛するなんてくだらないって、言ってたじゃん
鳳 栄一
鳳 栄一
ああ。俺が間違ってた。
アンドロイドってさ、凄く純粋なんだ。
打算的な考えをしないというか……

栄一は、ハナに惹かれることになった経緯を話し始めた。



***



栄一とハナの出会いは、今から約1年前。


ちょうど、ヨウがロールアウトされたのと同時期に、ハナもまた鳳家に使用人として派遣された。
ハナ
ハナ
製造コードD8739・野々瀬ののせはなです。
『ハナ』とお呼びください
鳳 栄一
鳳 栄一
初めまして。
息子の栄一です
ハナ
ハナ
栄一様ですね。
これからよろしくお願いいたします
鳳 栄一
鳳 栄一
様なんて……。
もっと気軽に呼んでくれたら
ハナ
ハナ
分かりました。
では、栄一さん

鳳家はそれまで、人間の使用人を3名雇っていて、仕事は充分にこなしてくれていたし、誰も不満はなかった。


きっかけは、栄一の父親が開発に関わっている最新のアンドロイドを、本人が雇ってみたいと言い出したことだ。


研究結果をこの目で見てみたいという、研究者ならではの好奇心。


国にも融通が利き、その後ハナが国によって選定された。


ハナは仕事の覚えが早く、最新のアンドロイドらしく感情が豊かで、気遣いまで完璧。


その上、1人で4人分くらいの働きをする。


食事も必要が無いため、住み込みでも鳳家への負担が少ない。


それを見た栄一の父は、他の使用人を全員辞めさせて、ハナひとりだけを残した。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
えっ……
鳳 栄一
鳳 栄一
親父は、そういうところがあるから。
ハナは辞めさせられた人たちのことを思って、苦しんでたよ

夢咲博士亡き後、栄一の父親は研究所での負担が増え、更に忙しくなった。


ハナのことを評価はしているものの、家では冷たく扱うという。


それを見かねた栄一が、彼女を気に掛けている間に、互いに惹かれ合っていった。


栄一の告白をハナが受け入れたのも、蝶子は分かる気がした。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
でも、でもね。
アンドロイドは、人間に好かれるよう行動するプログラムが組み込まれてるんだよ。
それに、一生一緒には居られないし……
鳳 栄一
鳳 栄一
もちろん分かってる。
でも、これから先、ハナ以上に素敵な相手が見つかるとは思えない。
俺にはもったいないくらい、できた女性なんだ

いつも冷静な栄一が、これだけは譲れないと、熱く語る。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
(私だって、そう思い切ることができれば、どんなによかったか……)

蝶子もまた、ヨウを思い出して、切なくなってしまった。



【第13話へ続く】