第15話

告白
840
2021/08/18 04:00
ヨウ
ヨウ
蝶子さん!
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
え! お、おかえり……。
どうしたの?

屋敷に戻るなり、ヨウは一目散に蝶子の部屋に向かった。


何かの資料を読んでいた蝶子は、その勢いにびっくりして顔を上げる。
ヨウ
ヨウ
蝶子さん!
僕はあなたが好きです!

ヨウは、大声で思いのたけを伝える。


蝶子の表情は、驚きから苦しそうなものに変わり、ついには俯いてしまった。
ヨウ
ヨウ
蝶子さん……?



***


夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……っ

ヨウのことが好きなのに、蝶子はすぐに返事ができなかった。


人間とアンドロイドの恋愛には、障害があるから。


だが、栄一とハナが真剣に向き合っているのを見て、羨ましいと思ってしまうのも本当だ。
ヨウ
ヨウ
蝶子さんは、僕のこと……好きじゃない?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
ううん。
好き……
ヨウ
ヨウ
じゃあっ……!

ヨウは目を輝かせたが、蝶子の表情を見て、言葉に詰まった。


蝶子の頬には、涙が伝っている。
ヨウ
ヨウ
やっぱり、僕が人間じゃないから……?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
そうだね。
私たちは一緒に歳を取ることができないし、いつかはヨウをひとりにしちゃう。
それでもいいの?
ヨウ
ヨウ
……いい
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
恋をするなら、アンドロイドの子とした方が楽だよ?
ヨウ
ヨウ
蝶子さん以外はあり得ない。
許される限り、僕は一緒にいたい。
蝶子さんが僕に恋心を教えたんだから、責任とってください

最後は少し強引に、ヨウは言った。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
(ああ、参ったなあ……。
むしろ恋心を教えられたのは私なんだけど……)

この先に広がるのは、いばらの道だ。


それでも今の自分の感情にはあらがえず、蝶子はヨウの手を取って、覚悟を決める。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
分かった
ヨウ
ヨウ
蝶子さん!

今までにないくらい、ヨウは綺麗な笑顔を見せた。



***



蝶子とヨウは正式に恋人同士になった。


蝶子は海外にいる両親に連絡をとり、真剣に交際していることを報告する。
蝶子の母
蝶子の母
本気なの?
蝶子の父
蝶子の父
蝶子は、アンドロイドの研究をするつもりなんだろう?
辛くならないのか?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
それは、覚悟してる。
後悔もしない

最初、蝶子の両親は反対していた。


だが、ヨウは博士の残した特別なアンドロイドであること、そして2人の気持ちが固いことを何度も確認し、渋々認めてくれた。


「互いに覚悟を決めて納得しているのなら、好きにしなさい」と。


通信が終わった途端、ヨウは蝶子を後ろから抱きしめる。


蝶子は驚いて、肩を跳ねさせた。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
ど、どうしたの? 突然……
ヨウ
ヨウ
ドラマで恋人同士がこうやってた

蝶子は心臓を跳ねさせ、恋愛ドラマをヨウに見せたのは失敗だったかと、少しだけ後悔した。


だが一方で、見せて良かったとも思ってしまう。
ヨウ
ヨウ
ねえ。
僕も栄一さんと同じように、蝶子って呼びたい
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
えっ、もちろんいいけど……
ヨウ
ヨウ
彼は恋人がいるのに、何で君を呼び捨てしてるの?
ずるい
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
そりゃ、人間同士の関係には色々あるから……あははっ

蝶子は嬉しくて、幸せで、笑ってしまった。


ヨウはついに、〝嫉妬〟の感情も覚えたらしい。


【第16話へ続く】

プリ小説オーディオドラマ