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第13話

再会
548
2021/08/04 04:00
鳳 栄一
鳳 栄一
……なんか、鳴ってないか?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
え? あっ、私だ

蝶子の通信用端末に、着信が入った。


アンドロイド事業部からだ。


蝶子の心臓が跳ねる。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……はい、夢咲です
アンドロイド事業部
アンドロイド事業部
お世話になっております。
コードZ1210の件でご連絡いたしました
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
ヨウが、どうかしたんですか?
アンドロイド事業部
アンドロイド事業部
あれからまた、不良品として何度も返還されております。
先程も返還申請が……
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
え!? そんなはずは……。
もう仕事も問題なくできるって、そちらも仰ったじゃないですか

蝶子は一瞬、自分の学習のさせ方が悪かったのかと疑った。


しかし、ヨウの本来の能力は高く、よっぽどのことがなければもう働けるはずだ。
アンドロイド事業部
アンドロイド事業部
報告書によりますと、勤務中はずっと上の空で、ミスを多発しているようです。
そして、蝶子様。
あなたのところへ帰りたいと、迎えに来た担当者に訴えています
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
…………

蝶子は絶句するしかなかった。
鳳 栄一
鳳 栄一
ふっ。
かなり人間くさく学習したな……

ぽかんとしている蝶子の前で、話を聞いていた栄一が笑みを漏らす。
アンドロイド事業部
アンドロイド事業部
つきましては、コードZ1210を再度蝶子様の屋敷へ送り届けます。
我々では、夢咲博士のご遺志に沿うことが難しいかと存じますので……。
よろしいでしょうか?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
は、はい……

つい承諾の返事をしてしまったが、蝶子は困惑していた。


栄一だけは、穏やかな表情で「よかったな」と言う。
鳳 栄一
鳳 栄一
ヨウくんが蝶子と一緒に居たいって思ってるなら、夢咲博士の遺志の為にも、受け入れてあげたら?
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
それは、そうなんだけど……私が困る
鳳 栄一
鳳 栄一
何かあれば、俺が話を聞くから

栄一に背中を押され、蝶子は複雑な気持ちのまま頷いた。



***



翌日の夕方、ヨウは屋敷の前まで車で送り届けられた。
ヨウ
ヨウ
蝶子さん……

降りてきたヨウは嬉しそうに笑ったかと思いきや、目を左右に泳がせた。


不甲斐ないと反省している部分もあるのだろうか。


今度は俯いて眉を下げたり、蝶子の顔色を窺いたくて顔を上げたりと、百面相している。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
(これを追い返せって方が無理だ……)

彼を愛しいと思う気持ちを認め、蝶子は笑った。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
おかえり
ヨウ
ヨウ
……!

ヨウは弾けるように顔を上げ、切なそうに顔を歪めた後、蝶子に駆け寄ってきた。


突然のことに蝶子が身構える暇も無く、ヨウは蝶子を思いきり抱きしめる。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
ええ!?
ちょっ、ヨウ!?
ヨウ
ヨウ
前に見せてもらった映画にあった。
再会のハグ
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
分かる!
分かるけど……ここ外だから!
ヨウ
ヨウ
映画でも外だった

ヨウは力を弱める気がないらしい。


蝶子は嬉しい気持ちをどうにか振り切り、顔を真っ赤にして叫んだ。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
これ以上やったら怒るよ!
ヨウ
ヨウ
……はい

本気が伝わったのか、ヨウはすんなり蝶子を離した。


代わりに、大切なものでも見つめるかのように、目を細めている。
ヨウ
ヨウ
蝶子さんだ。
会いたかった……
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
……!
そんなに、時間経ってないでしょ

蝶子は、舞い上がってしまう自分が嫌になる。


本当は自分も会いたかったのに、言うことはできない。


ヨウが帰って来た――その事実だけで、充分だった。



***



深夜、ふと廊下で足音がして、蝶子は目を覚ました。


その足音は蝶子の部屋の前で止まり、ドアを開けて中へ入ってくる。


蝶子が驚いて飛び起きると、ヨウは暗闇の中で枕を抱きかかえていた。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
な、何してるの?
ヨウ
ヨウ
蝶子さんと一緒に寝たい。
いや、寝る
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
いや、勝手に宣言しないで!
……って、こら!

混乱する中で、ヨウはいそいそと蝶子のベッドの中へ入ってきた。
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
いくらなんでも、一緒に寝る必要ないでしょ!?
ヨウ
ヨウ
僕はただのアンドロイドだから。
蝶子さんには何もしない。
それでもだめ?

蝶子はヨウのおねだりに弱い。


ヨウはそれを分かっていてやっているのではないかと疑うくらい、今日は押しが強かった。
ヨウ
ヨウ
ずっとひとりで、寂しかった……。
今日だけは、お願い
夢咲 蝶子
夢咲 蝶子
きょ、今日だけだからね……!
ヨウ
ヨウ
やった

ヨウはにこりと笑って、約束通り蝶子には背を向けたまま横になる。


蝶子はヨウに背中をくっつけ、その体温を感じながら、咎める気持ちも忘れて眠ってしまった。



【第14話へ続く】