朝は家まで迎えに来てくれる。
ガチャ
彼の笑顔はいけない。
色んな人には見せたらダメだ。
みんなが好きになっちゃうから
そんなことを考えていると、
手があたたかくなった。
歩いて登校するときに、楽しいことはこれ。
さらっとこんなことを言う彼はずるい。
でも、少しだけ照れているのがわかる
強く握り返した。
彼はもっと、ギュッと握ってくれた
あ、ちょっと拗ねたかな?
わざとらしい言い方。
でもほんとに、少し寂しそうな顔。
私のいけないところは、それに負けること
彼は私以上に私のことを知っている。
こう言えば、許してくれるとか、
これをすれば喜んでくれるとか、
身体のここが弱いとか。
私は全然、知ってるつもりでも
知らないことばっかり。
やっぱり、彼はずるい。
キーンコーンカーンコーン
繋がれた手は離されず
私の手は、熱くなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!