第4話

04 魔導士リュオン
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2023/11/26 11:00
アレン王子
アレン王子
なぜあの、高名なリュオン殿がここに……?
リュオン
リュオン
なぜって、それは、ここにおられる公爵令嬢フリージア様が、
僕の命の恩人だからです
アレンの顔がサッと青くなった。
アレン王子
アレン王子
リュオン殿!
そこのフリージアから何を吹き込まれたのか知らないがっ
リュオン
リュオン
アレン殿下は、婚約者から『何かを吹き込まれた』と
心配しなければいけないような、うしろめたいことがあるのですか?
アレン王子
アレン王子
……いや、そういうわけでは……
アレンの声はすっかり小さくなっている。

私は、小声でリュオンに話しかけた。
(なまえ)
あなた
ねぇリュオン。
魔導士ってえらいの?
今のやり取りを見ていると、王子よりえらいのかと不思議になってしまう。

私の質問を聞いたリュオンは、また優しい笑みを浮かべた。
リュオン
リュオン
魔導士はえらくないよ。
普段は魔塔にこもって魔術の研究ばかりしているからね。
ただ……魔導士を怒らせたら怖いだけ
リュオンに、にらみつけられたアレンが小さく息をのむ。

それを見ていたローズがほほをふくらませた。
ローズ
ローズ
魔導士が何よ? こっちは王子様よ!
将来、アレン様がこの国の王様になるんだから!
アレン王子
アレン王子
行こう、ローズ
アレンは逃げるように部屋から出て行く。

二人の後ろ姿を見送った私は、ため息をついた。
(なまえ)
あなた
あれが、フリージア様の婚約者?
リュオン
リュオン
そう、あれが最低な婚約者
(なまえ)
あなた
フリージア様は、どうしてすぐに婚約をやめなかったの?
リュオン
リュオン
この世界の婚約は、家同士の繋がりのためなんだ。
だから、本人が嫌だからと、勝手にやめることはできない
(なまえ)
あなた
そうなんだ……。
フリージア様、つらかっただろうね……
リュオン
リュオン
僕がもっと早く気がついていたら……
くやしそうなリュオンの肩を、私は優しくポンポンとたたいた。
(なまえ)
あなた
今からでも遅くないよ!
私達でフリージア様の願いをかなえて、彼女がこっちの世界に戻ってきたときに、
幸せに暮らしてもらおう。ね?
リュオン
リュオン
……そうだね。
ありがとう、あなた
私の手にリュオンの大きな手が重なった。

その温かさにドキッとしてしまう。

人の体温まで感じる不思議な夢……。
(なまえ)
あなた
ねぇ、リュオン。
これって全部、夢だよね?
リュオン
リュオン
もし、現実だったらあなたはどうする?
(なまえ)
あなた
もし現実だったら……
リュオン
リュオン
今すぐ元の世界に帰りたい?
リュオンは、とても心配そうな顔をしている。
(なまえ)
あなた
帰りたいけど、帰れないんだよね?
だったら、私もフリージア様の復讐を手伝うよ
リュオン
リュオン
あなた……
フリージアの身体の中にいるせいか、彼女の記憶を見たせいかはわからないけど、フリージアのことを他人事とは思えない。
(なまえ)
あなた
リュオン。
さっきは、アレンから守ってくれてありがとう
リュオン
リュオン
どういたしまして。
でも、僕が助けなくても、あなたはとてもカッコ良かったよ
嬉しそうなリュオンの笑顔がまぶしい。
(なまえ)
あなた
そういえば、さっきのローズなんだったの?
リュオンを見て悲鳴をあげるなんて……
リュオン
リュオン
ああ、まぁいつものことだよ。
ほら、僕って黒髪だから
(なまえ)
あなた
黒髪が? どうしたの?
リュオン
リュオン
この国では、黒髪は魔導士に多いんだけど、不幸を呼ぶとも言われているんだ。
もちろん迷信だけど
(なまえ)
あなた
そうなの?
私の住んでいるところだと、黒髪の人のほうが多かったよ
リュオン
リュオン
なるほどね、だからあなたは僕のことを気味悪がらないのか。
僕は黒髪の上に、目が赤いからよけいにこわがられるんだけど
(なまえ)
あなた
そうなんだ……。
すごくきれいなのに
リュオンは、手で顔を隠すようにうつむいた。

指のすきまから見える顔が、赤くなっている。
リュオン
リュオン
ほめられると、こんなに嬉しいんだ……
(なまえ)
あなた
え?
顔をあげたリュオンの瞳は、キラキラと輝いている。
リュオン
リュオン
あなたは、僕をいっぱい頼ってね!
他人に利用されるのは嫌だけど、あなたにだけは頼られたい。
こんな気持ちは初めてだよ
(なまえ)
あなた
え、あ、うん……?
リュオン
リュオン
あなた、何かほしいものはない?
なんでもいいよ!
君になら、なんでもしてあげたい!
(なまえ)
あなた
じゃ、じゃあ、私が元の世界に帰れるように手伝って……?
リュオン
リュオン
うん! それは、もちろん!
他にはない? ねぇねぇ?
(なまえ)
あなた
い、今はないかな
私の言葉で、リュオンはしょんぼりしてしまった。
(なまえ)
あなた
何か思いついたら、そのときはお願いするね
リュオン
リュオン
うん!
リュオンに輝くような笑みを向けられて、私はそのあまりのまぶしさに目をつぶった。

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