お姫様が出てくる夢を見た。
金色の髪と青い瞳を持つ、とてもきれいなお姫様は、悲しそうな顔をしている。
お姫様は、なぜか私にそう言った。
***
真っ赤な瞳が私を見つめている。
気がつくと、なぜか私は知らない黒髪の青年にお姫様抱っこされていた。
青年は、黒いフード付きのマントを羽織っていて、まるで魔法使いのような格好をしている。
これが夢だとわかっていても、初対面の人にお姫様抱っこをされているのは気まずすぎる。
リュオンと名乗った青年は、私をそっとソファーの上におろしてくれた。
部屋の中には、西洋風な家具が置かれている。
そう言いながら悩むリュオンの顔が、とんでもなく整っていることに、私は気がついてしまった。
艶やかな黒髪に、透き通るような美しい肌。
まつ毛は長いし、目も鼻も唇もとても綺麗な形をしている。
思わず見とれてそんなことを言ってしまう。
リュオンが首をかしげると、黒髪がサラサラと流れた。
男性に向かってきれいというのは失礼かもしれないけど、リュオンにはその言葉しか思い浮かばない。
私が真剣にお願いすると、リュオンは赤い瞳を大きく見開いた。
私が部屋の中にある鏡にかけよると、鏡には金髪碧眼の美しい女性が映った。
リュオンは、私のそばに立つとニコニコしながら教えてくれる。
私が指をさすと鏡の中のお姫様も、こちらを指さす。
私がほほをさわると、鏡の中のお姫様もほほをさわった。
そう聞くと、それまでニコニコしていたリュオンは目に見えて落ち込んだ。
リュオンは、ゆっくりと腕を組んだ。
悩む仕草がとても絵になっている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。