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第1話

01 目が覚めたら
3,478
2023/11/05 11:00
お姫様が出てくる夢を見た。


金色の髪と青い瞳を持つ、とてもきれいなお姫様は、悲しそうな顔をしている。
???
???
ごめんなさい。あなたを巻き込んでしまって
お姫様は、なぜか私にそう言った。


***
(なまえ)
あなた
……変な夢
???
???
どんな夢?
(なまえ)
あなた
え?
真っ赤な瞳が私を見つめている。

気がつくと、なぜか私は知らない黒髪の青年にお姫様抱っこされていた。

青年は、黒いフード付きのマントを羽織っていて、まるで魔法使いのような格好をしている。
リュオン
リュオン
はじめまして、僕はリュオン。魔導士だよ
(なまえ)
あなた
魔導士……お姫様の次は、魔法使い?
本当に変な夢
リュオン
リュオン
夢だと思っているんだね。
君の名前は?
(なまえ)
あなた
私は、あなたですけど……とりあえず、おろしてもらえますか?
これが夢だとわかっていても、初対面の人にお姫様抱っこをされているのは気まずすぎる。
リュオン
リュオン
ああ、ごめん。
気持ち悪かったね
(なまえ)
あなた
いや、気持ち悪くはないですけど……
リュオンと名乗った青年は、私をそっとソファーの上におろしてくれた。

部屋の中には、西洋風な家具が置かれている。
(なまえ)
あなた
ここはどこですか?
リュオン
リュオン
何から説明したらいいのかな……
そう言いながら悩むリュオンの顔が、とんでもなく整っていることに、私は気がついてしまった。
(なまえ)
あなた
(な、に……この超絶美形は?)
つややかな黒髪に、透き通るような美しい肌。

まつ毛は長いし、目も鼻も唇もとても綺麗な形をしている。
(なまえ)
あなた
きれい……
思わず見とれてそんなことを言ってしまう。
リュオン
リュオン
うん、何が?
リュオンが首をかしげると、黒髪がサラサラと流れた。
(なまえ)
あなた
うらやましい……。
どうしたら、そんなにきれいになれるんですか!?
男性に向かってきれいというのは失礼かもしれないけど、リュオンにはその言葉しか思い浮かばない。
リュオン
リュオン
きれいって、誰が?
(なまえ)
あなた
貴方ですよ、リュオンさん!
髪とお肌のお手入れ方法、教えてほしいです
私が真剣にお願いすると、リュオンは赤い瞳を大きく見開いた。
(なまえ)
あなた
わぁ……赤い目って幻想的……きれい……
リュオン
リュオン
僕がきれいだなんて、本気で言ってるの?
(なまえ)
あなた
もちろん!
リュオン
リュオン
ウソじゃないんだ……
(なまえ)
あなた
夢の中で、わざわざウソをつく必要なんてないですよ。
あ、もしかして、この夢の中では、超絶美形が当たり前とか!?
私もきれいになってるかも!?
私が部屋の中にある鏡にかけよると、鏡には金髪碧眼の美しい女性が映った。
(なまえ)
あなた
きれい、でも、あれ?
この顔って、さっき夢の中で見たお姫様にそっくり……
リュオン
リュオン
それは、フリージア様だよ
リュオンは、私のそばに立つとニコニコしながら教えてくれる。
(なまえ)
あなた
フリージア様?
私が指をさすと鏡の中のお姫様も、こちらを指さす。

私がほほをさわると、鏡の中のお姫様もほほをさわった。
(なまえ)
あなた
あ、あれ?
リュオン
リュオン
実は、あなたとフリージア様の魂が入れ替わってしまったんだ。
だから、君は今、フリージア様の身体の中に入っている。
(なまえ)
あなた
それって、私があのお姫様になっているってことですか!?
リュオン
リュオン
フリージア様は、お姫様じゃなくて、
公爵令嬢こうしゃくれいじょうだよ
(なまえ)
あなた
こうしゃくれいじょう?
リュオン
リュオン
あ、そうか。
そっちの世界ではなじみがない言葉なのかな?
公爵家こうしゃくけは、王族の次にえらい貴族だと思っていればいいよ
(なまえ)
あなた
ちょっと待って?
『そっちの世界』って?
リュオン
リュオン
この世界は、あなたが住んでいた世界とは別の世界なんだ。
いわゆる剣と魔法の異世界ってやつ
(なまえ)
あなた
ファンタジーの世界ってこと?
リュオン
リュオン
そうそう、そんな感じ。
それで、魂を入れ替える禁断魔法が発動してしまって、
別世界に存在していたあなたとフリージア様の魂が入れ替わってしまったんだ
(なまえ)
あなた
そんな!?どうすればいいの……って、
そういえば、これは夢だった
リュオン
リュオン
夢と思っていてくれてもいいけど、あなたは、元の世界に帰りたいよね?
ずっとこのままは嫌でしょう?
(なまえ)
あなた
それは、もちろん
リュオン
リュオン
じゃあ、僕と一緒にがんばろうか!
(なまえ)
あなた
何を?
そう聞くと、それまでニコニコしていたリュオンは目に見えて落ち込んだ。
リュオン
リュオン
実は、魂入れ替わりの禁断魔法が発動してしまったのは、
僕がフリージア様にあげたお守りのせいなんだ
(なまえ)
あなた
お守りで魔法が使えるの?
リュオン
リュオン
普通は使えないんだけど、僕の強い魔力をこめて作ったお守りだったから、
持つ人の願いをかなえる力があったんだ
(なまえ)
あなた
わかるような、わからないような……
リュオン
リュオン
とにかく、あなたが元の世界に帰るには、
フリージア様の願いをかなえなければいけないってことだよ
(なまえ)
あなた
えっと、じゃあ、まあこれはそういう設定の夢だとして……。
そのフリージア様の願いってなんですか?
リュオンは、ゆっくりと腕を組んだ。

悩む仕草がとても絵になっている。
リュオン
リュオン
それは……
リュオン
リュオン
うーん、やっぱり復讐、かな?

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