第2話

02 王子登場
1,339
2023/11/12 11:00
(なまえ)
あなた
復讐!?
リュオン
リュオン
そう、復讐。
実は、フリージア様の婚約者こんやくしゃが最低な男でね
(なまえ)
あなた
婚約者って、将来、結婚の約束をしている人のことですよね?
リュオン
リュオン
そう……なんだけど。あなた、もっと気楽に話してよ。
君とは仲良くなりたいんだ
(なまえ)
あなた
あ、えっと、じゃあ、わかった
私が丁寧な話し方をやめると、リュオンは、パァと顔を輝かせる。
リュオン
リュオン
嬉しいな
向けられた笑顔のまぶしさに、私は目をつぶった。
(なまえ)
あなた
(すごい。美形の笑顔の破壊力がすごい)
リュオン
リュオン
あなた、どうしたの?
大丈夫?
リュオンに顔をのぞきこまれて、私は思わずのけぞった。

そのとたんに、リュオンの表情が曇る。
リュオン
リュオン
あっ……ごめん
(なまえ)
あなた
こっちこそ、ごめん!
美形になれていなくて!!
リュオン
リュオン
美形って……もしかして僕のこと?
私が必死にうなずくと、リュオンは手で自身の口元を押さえた。

少し照れているように見えるのは気のせいか。
(なまえ)
あなた
(照れる美形の破壊力もすごい……。もう一生、見ていられる)
リュオンは、ごまかすように咳払いをすると、話を元に戻した。
リュオン
リュオン
えっと、その最低な婚約者が、フリージア様以外の女性と仲良くしていたらしいんだ
(なまえ)
あなた
浮気していたってこと?
リュオン
リュオン
そう、浮気。
その最低な男は、その浮気相手をパーティーに連れて来て、
婚約者であるフリージア様に見せびらかしたらしくて
(なまえ)
あなた
最低すぎる……
リュオン
リュオン
フリージア様は、それがよほどショックだったんだろうね。
僕があげたお守りに何かを強く願ったんだ
(なまえ)
あなた
そうしたら、私とフリージア様の魂が入れ替わったってこと?
リュオン
リュオン
そういうこと。
フリージア様の願いが『何か』までは僕にはわからないんだけど……。
その願いが叶えられるまで、君は元の世界に帰れない
(なまえ)
あなた
わかった、これはそういう設定の夢なんだね
リュオン
リュオン
夢じゃないんだけどね。
まぁいいか
(なまえ)
あなた
リュオンの言うとおり、その流れだと、
フリージア様の願いは、浮気をした婚約者への復讐っぽいね
リュオン
リュオン
でしょう?
だから、僕と一緒にフリージア様の願いを叶えてくれないかな?
(なまえ)
あなた
もちろん、いいよ
リュオン
リュオン
あっさりしてるね
(なまえ)
あなた
まぁ、しょせん夢だからね。
リュオンみたいなカッコいい人と一緒にいれるなんて、楽しい夢だよ
リュオン
リュオン
あなた……
リュオンにふわりと微笑みかけられて、私の心臓は跳ね上がる。

動揺しすぎて、足元がふらついてしまった。
リュオン
リュオン
危ないよ
リュオンが支えてくれたので、こけはしなかったけど、高いヒールは歩きにくい。
リュオン
リュオン
靴を履き替えたほうが良さそうだね。
一度、公爵家に戻ろう
(なまえ)
あなた
公爵家って、フリージア様の家に行くってこと?
リュオン
リュオン
そう、僕の家に行っても、女性物の着替えなんてないからね
(なまえ)
あなた
でも、フリージア様ってすごくえらい人の娘さんなんだよね?
家族に中身が娘じゃないとバレたら大変なことになるんじゃないの?
リュオン
リュオン
心配ないよ。
魂はあなたでも、身体はフリージア様だから、
立ち居振る舞いがフリージア様そのものだよ。
ほら、見て
リュオンに言われて鏡を見ると、そこには背筋を伸ばして、涼しい顔で豪華なドレスを着こなすフリージアが立っていた。
リュオン
リュオン
魂が入れ替わっても、身体は覚えているんだ。
だから、異世界なのにあなたは僕の言葉がわかるし、
この世界の常識や、フリージア様の知り合いとかもわかるはず
それを聞いて私が安心したとたんに、部屋の扉が乱暴に叩かれた。
???
???
フリージア!
責めるように冷たく名前を叫ばれる。

私はこの男性の声に不思議と聞き覚えがあった。

すぐに頭の中に『アレン』という名前が浮かぶ。
(なまえ)
あなた
ねぇ、リュオン。
この怒鳴り声、フリージア様の婚約者アレンのような気がする
リュオン
リュオン
そうだね、僕もそうだと思うよ
フリージアの知識によると、アレンは、この国の第一王子で、将来国王になる予定の人物らしい。
(なまえ)
あなた
扉、開けないとダメかな?
リュオン
リュオン
開けなくていいよ
リュオンは、アレンのことが少しも怖くないようでノリが軽い。
(なまえ)
あなた
アレン、すごく怒ってるね
リュオン
リュオン
大丈夫、だれであろうと、君には指一本ふれさせないから
アレン王子
アレン王子
フリージア!
ここにいるのは、わかっているぞ!
扉が勢いよく開き、アレンが怒鳴り込んできた。

リュオンは、私をかばうようにアレンの前に立ちはだかってくれる。
リュオン
リュオン
フリージア様は、休憩中です。
お引き取りください
アレン王子
アレン王子
だれだ、貴様は!?
その汚らわしい黒髪……魔導士か?
リュオン
リュオン
だったら、何か?
リュオンの赤い瞳が、スッと細くなる。

アレンをにらみつけるリュオンは、私に笑いかけてくれた人とは別人のように、冷たい顔をしていた。

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