私が丁寧な話し方をやめると、リュオンは、パァと顔を輝かせる。
向けられた笑顔のまぶしさに、私は目をつぶった。
リュオンに顔をのぞきこまれて、私は思わずのけぞった。
そのとたんに、リュオンの表情が曇る。
私が必死にうなずくと、リュオンは手で自身の口元を押さえた。
少し照れているように見えるのは気のせいか。
リュオンは、ごまかすように咳払いをすると、話を元に戻した。
リュオンにふわりと微笑みかけられて、私の心臓は跳ね上がる。
動揺しすぎて、足元がふらついてしまった。
リュオンが支えてくれたので、こけはしなかったけど、高いヒールは歩きにくい。
リュオンに言われて鏡を見ると、そこには背筋を伸ばして、涼しい顔で豪華なドレスを着こなすフリージアが立っていた。
それを聞いて私が安心したとたんに、部屋の扉が乱暴に叩かれた。
責めるように冷たく名前を叫ばれる。
私はこの男性の声に不思議と聞き覚えがあった。
すぐに頭の中に『アレン』という名前が浮かぶ。
フリージアの知識によると、アレンは、この国の第一王子で、将来国王になる予定の人物らしい。
リュオンは、アレンのことが少しも怖くないようでノリが軽い。
扉が勢いよく開き、アレンが怒鳴り込んできた。
リュオンは、私をかばうようにアレンの前に立ちはだかってくれる。
リュオンの赤い瞳が、スッと細くなる。
アレンをにらみつけるリュオンは、私に笑いかけてくれた人とは別人のように、冷たい顔をしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!