第3話

03 王子とその浮気相手
929
2023/11/19 11:00
リュオンとアレンはにらみ合っている。
アレン王子
アレン王子
どけ、魔導士になど用はない!
フリージア、さっきの態度はなんだ!
(なまえ)
あなた
さっき……?
アレンの言葉で、フリージアの記憶が、私の頭に流れ込んできた。


***


私が今いるこの場所は、貴族や王族が通う学園だ。

今日は学園の卒業式で、そのパーティーが開かれていた。

フリージアは、卒業生ではなかったけど、一つ年上の婚約者アレンが卒業するので、それを祝うためにパーティーに参加していた。

その卒業パーティーの場に、アレンは婚約者ではなく浮気相手のローズをエスコートしながら現れた。
アレン王子
アレン王子
きれいだ、ローズ
ローズ
ローズ
うれしい。
アレン様も素敵よ
フリージア
フリージア
……
仲の良い姿を見せつけられても、フリージアは何も言わなかった。

でも、近づいてきたアレンに何かを耳打ちされたとたんに、フリージアの身体がビクッとふるえた。

その後、フリージアは、逃げるようにパーティー会場をあとにした。

だれもいない庭園でリュオンからもらったお守りを握りしめる。

フリージアが涙を流しながら、何かをささやいたとたんに、フリージアは光に包まれた。

***
(なまえ)
あなた
今のは……?
リュオン
リュオン
どうしたの?
私は小声でリュオンに、フリージアの記憶が見えたことを伝えた。
(なまえ)
あなた
でも、フリージア様が何を願ったのか、重要なところが聞き取れなくて
リュオン
リュオン
魂と身体が馴染むには時間がかかるのかも?
これから、少しずつフリージア様の記憶が流れてくるのかもしれないね。
そうなっても、君の魂が変わってしまうことはないから安心してね
アレン王子
アレン王子
何をこそこそと話している!
アレンの怒声を聞いて、着飾った女性が部屋に入ってきた。
ローズ
ローズ
アレン様、ここにいたのね。
ずっと捜していたのよ
ローズは、アレンの腕に自分の腕をからめて、ピッタリと身体をくっつけた。
(なまえ)
あなた
うわぁ……
婚約者がいるのに、こんなに堂々と浮気をされたら、フリージアじゃなくても逃げ出したくなってしまう。

どうしたらいいのかわからず、私がリュオンを見ると、リュオンは優しく微笑んでくれた。
リュオン
リュオン
大丈夫だよ。心配しないで
そう言うと、リュオンは胸ポケットから銀色の懐中時計を取りだした。
リュオン
リュオン
日も暮れたし、もう良い時間だ。帰ろう
リュオンは私の手を優しく引いてくれる。

私達が部屋から出て行こうとすると、アレンがまた叫んだ。
アレン王子
アレン王子
フリージア!
どこにいくつもりだ!?
(なまえ)
あなた
どこって……家に帰るんですけど?
私の言葉に、アレンは驚き目を見開く。
(なまえ)
あなた
(あ、そうだ。今の私はフリージアだから、お嬢様っぽく話さないといけないんだった)
フリージアの話し方がわからないので、とりあえず、背筋を伸ばして堂々としておく。
(なまえ)
あなた
私に何かご用ですか?
アレン王子
アレン王子
なっ!?
私がアレンを真っすぐ見つめてそう言うと、アレンはさらに驚いた。
アレン王子
アレン王子
フリージア、貴様!
アレンの声が大きくて、私は思わず耳をふさいだ。
(なまえ)
あなた
そんなに大きな声で話さなくても、聞こえています
アレンは、口をパクパクとさせている。
(なまえ)
あなた
ご用件はなんですか?
アレン王子
アレン王子
さっきからその態度はなんだ!?
俺はお前の婚約者だぞ?
(なまえ)
あなた
婚約者?
そのわりには、別の女性と親しいようですが?
私がチラリとローズを見ると、ローズはおびえるようにアレンに身を寄せた。
ローズ
ローズ
フリージア様、こわい
アレン王子
アレン王子
ああ、ローズ可哀想に
アレンは、ローズをなぐさめるように肩を抱き、私をにらみつけてきた。
アレン王子
アレン王子
フリージア!
ローズに謝るんだ!
(なまえ)
あなた
どうしてですか?
アレン王子
アレン王子
な、なんだと!?
(なまえ)
あなた
どうして私が婚約者の浮気相手に、謝らないといけないんですか?
アレンの言っていることは意味がわからない。

困った私がリュオンを見ると、リュオンは、もうガマンできないといったように笑い出した。
リュオン
リュオン
あはは、本当にそうだね
とたんにローズが悲鳴を上げる。
ローズ
ローズ
黒髪!?なんて不気味な!
アレン様、すぐにあの人を追い出してください!
(なまえ)
あなた
え? もしかして、今、リュオンの黒髪が不気味って言ったの?
あんなにツヤツヤできれいなのに?
私がリュオンを見ると、リュオンは嬉しそうに私を見つめている。
アレン王子
アレン王子
フリージア……貴様、今『リュオン』と言ったか?
もしかして、この黒髪の男、あの天才魔導士リュオンではないだろうな!?
アレンの言葉を聞いて、リュオンはまた冷たい顔に戻った。
リュオン
リュオン
そうですよ。お初にお目にかかります、アレン殿下。
魔導士リュオンでございます

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