リュオンとアレンはにらみ合っている。
アレンの言葉で、フリージアの記憶が、私の頭に流れ込んできた。
***
私が今いるこの場所は、貴族や王族が通う学園だ。
今日は学園の卒業式で、そのパーティーが開かれていた。
フリージアは、卒業生ではなかったけど、一つ年上の婚約者アレンが卒業するので、それを祝うためにパーティーに参加していた。
その卒業パーティーの場に、アレンは婚約者ではなく浮気相手のローズをエスコートしながら現れた。
仲の良い姿を見せつけられても、フリージアは何も言わなかった。
でも、近づいてきたアレンに何かを耳打ちされたとたんに、フリージアの身体がビクッとふるえた。
その後、フリージアは、逃げるようにパーティー会場をあとにした。
だれもいない庭園でリュオンからもらったお守りを握りしめる。
フリージアが涙を流しながら、何かをささやいたとたんに、フリージアは光に包まれた。
***
私は小声でリュオンに、フリージアの記憶が見えたことを伝えた。
アレンの怒声を聞いて、着飾った女性が部屋に入ってきた。
ローズは、アレンの腕に自分の腕をからめて、ピッタリと身体をくっつけた。
婚約者がいるのに、こんなに堂々と浮気をされたら、フリージアじゃなくても逃げ出したくなってしまう。
どうしたらいいのかわからず、私がリュオンを見ると、リュオンは優しく微笑んでくれた。
そう言うと、リュオンは胸ポケットから銀色の懐中時計を取りだした。
リュオンは私の手を優しく引いてくれる。
私達が部屋から出て行こうとすると、アレンがまた叫んだ。
私の言葉に、アレンは驚き目を見開く。
フリージアの話し方がわからないので、とりあえず、背筋を伸ばして堂々としておく。
私がアレンを真っすぐ見つめてそう言うと、アレンはさらに驚いた。
アレンの声が大きくて、私は思わず耳をふさいだ。
アレンは、口をパクパクとさせている。
私がチラリとローズを見ると、ローズはおびえるようにアレンに身を寄せた。
アレンは、ローズをなぐさめるように肩を抱き、私をにらみつけてきた。
アレンの言っていることは意味がわからない。
困った私がリュオンを見ると、リュオンは、もうガマンできないといったように笑い出した。
とたんにローズが悲鳴を上げる。
私がリュオンを見ると、リュオンは嬉しそうに私を見つめている。
アレンの言葉を聞いて、リュオンはまた冷たい顔に戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。