鳴兎が唱えた瞬間、僕達は屋敷から消えた。
正確には、屋敷から出て長の所に行ったんだけど。
やっぱり、そうよね。
蝶族は僕達と同じ遺伝型能力者で、常人の攻撃ではそうそう死ぬ事はない。
ーーなぜあれだけいた蝶族が、たった二人になってしまったのだろうか。
それが皆不思議で堪らなかった。
バン!と扉を開く音を立ててとある星兎は姿を現した。
その瞬間、星兎を捕まえていた男の人の口から大量の血が出てきた。
“棄亜”と呼ばれた少年(?)は体をビクつかせ、恐る恐る顔を上げた。
本来星兎は僕のように眼の色が別々…オッドアイにならなくてはならない。
だが稀に、同色の眼をする子もいる。
恐らくこの子も幽閉されていたのだろう。
それなら、僕の決断は一つーー
ーーやっぱり僕の方に来たか。
あんな仕打ちを受けて、それでもここに居たいと思う人はほぼ居ないだろう。
だけどーー
棄亜君の眼は、覚悟をしたような真剣な眼だった。
それなら、その覚悟に応えなきゃだよね。
莱閼は次元超越をし、僕達の屋敷へ戻った。
それからは、棄亜君の荷物やら龍族についてやらを色々としてから鳴兎に送ってもらった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!