初めてこんな気持ちになった
直人LINEのステータスメッセージが更新される度に思い出してしまう。
だから私は直人のLINEを非表示にした。
中学1年の間で先輩のかっこいい人も見つけて好きだと思い込んだりしていた。
ばかみたい。心からそう思ってる。
もうあんな恋はできない、そう思いながら2年に上がってクラスも変わった。
そこで出会ったのが、誠だった。
誠とは一緒にバカしてて、趣味も合って、私はすぐに恋に落ちた。
勇気を出して、告白もした。
そして誠と話さなくなってからまた、直人のことが頭に浮かんでしまった。
すごく複雑な気持ち。
どうすればかの絡まった心の紐がほどけるの?
そんな私が部活に行く途中にぼーっとしていて目の前を歩いていたのは
直人だった。
1年以上会いたくても会えなかった。
向こうは全然私に気づいていない。
声をかけようかと思ったけど、もし相手が覚えてなかったら傷つくことになるから、怖くてやめた。
卒業の時は同じくらいの背丈だったのに、いつのまにか私とは10センチ以上違う。
でも背中は変わらなかった。
私の大好きだった広くてあったかそうな背中。
私の心の中で何かが動いた。
だめだよこんなの。
誠がいるんだし、直人にも彼女がいるかもしれない。
それでも直人とバカしてた記憶が蘇る。
どうしても直人が浮かんでくる。
こんな気持ちで付き合ってても誠に失礼なだけだから別れを告げようと私は思ってしまった。
こうやって人を傷つけて自分を守る。
私の悪い癖だ。
でも、誠が現れなければこんな気持ちにならなかったのに…
今までありがとう、誠。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!