青藍さんによると、どうも、あやかしと人間の間のトラブルを解決することを生業にしている人たちがいるらしい。
彼らは「祓い屋」と呼ばれ、古くから対あやかしのトラブル解決に一役買ってきた。
問題を起こすあやかしは、同種からも煙たがられていたから、祓い屋の存在自体は受け入れられていたようだ。
しかしここ近年、祓い屋の中に、無差別にあやかしを殺める者が現れたらしい。
その祓い屋に間違われて、あやかしたちに追いかけられたり、齧られたりしないといいわね、と青藍さんは笑っている。
さあっと血の気が引いていく。
これって、たとえ無事に鎌倉から出られたとしても、どこかであやかしに遭遇でもしたら──命が危ないってことじゃないか。
彼氏に捨てられたばっかりでこの仕打ち!?
と、ひとり絶望感に包まれていると、突然、青藍さんがポンと手を打った。
思わず、興奮して身を乗り出す。
すると、青藍さんはニコニコと笑みを浮かべながら、とんでもないことを言い出した。
待って、と静止してみても、青藍さんは聞く耳を持ってくれない。
私の意思とは関係なく、トントン拍子で話が進んで行く。
思わぬ好条件に、うっかり了承しそうになる……が、青藍さんの背後に犇めくあやかしたちを見て、言葉を飲み込んだ。
おどろおどろしい彼らがいるこの場所で、私は上手くやっていけるだろうか。
正直なところ、不安しかない。
すると、そんな私を見かねたのか、おもむろに店員さんが口を開いた。
イケメンが浮かべた笑顔。
それは落ち武者やら、骨やら野生動物の犇めく店内にあって、まるで太陽の光のようだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。