第17話

第一章(12)
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2021/10/05 09:00
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
だからもう、初っ端からツンツンされちまってさ
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
それでも、入学式の後は一緒に行動してたんだろう?
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
目を合わせてくれなかったし、向こうから話しかけてくれることもなかったし、こっちから話しかけても、短い返事だけだったけどな。ちらっと見たけど、そっちはなんかいい感じだったじゃないか
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
いい感じというか、なんというか……
蒼司郎は今日のことを思い返す。
こちらが見るからに東洋からの留学生だからだろうか、最初はかなり身構えられていたし、言葉がわかるのかなんて心配されたりもした。本来は対等なパートナーに対する態度としてはかなり失礼な気がしなくもないが、リオルドのパートナーのようにツンツンした態度よりはだいぶマシなのだろう。
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
いい感じというよりは、なれなれしい、といったところだな
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
贅沢だな。それはお前と仲良くなりたいんだろうに
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
そういうもの、なのか?
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
ったく、羨ましいぜ。……おぉ、このショーユの瓶いいな。粋と雅を感じるぜ。中身を使い切ったら俺にくれよ
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
……ただの何の変哲もない醬油の瓶だぞ。というか、粋と雅が混在してたらそれはただの野暮じゃないかと思うんだが
蒼司郎は、皇御国ではありふれた醬油の大瓶を一瞥する。庶民向けの品ではなくやや高価なものなのでそれなりに見た目もいいが、それでも醬油瓶は醬油瓶だ。
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
そ、そうなのか……粋と雅……それに野暮……奥が深いな……!
はぁ、と蒼司郎はため息をつく。
もしかしたら、なれなれしいのは西洋人共通の特徴なんだろうか。リオルドもクロエも妙にべたべたしてくるし。
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
まぁ、今度ちゃんと会わせろよ
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
会わせるって?
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
お前のパートナーに。俺のパートナーも紹介するから!
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
……考えとく。とりあえずお前のところは、ちゃんと話ができるようになれよ
木箱の底に緩衝材として敷き詰められていたのは、浮世絵ではなく新聞だったが、それでもリオルドは「皇御国の文字がたくさん書かれている! エキゾチックだ!」と大喜びしていたので、問題ないのだろう。
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
そういえば、お前は部活はどうするんだ?
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
ふむ、部活か……
送られてきたハギレ類を仕分ける手を止めて、蒼司郎はしばし考える。
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
フェンシング部に、スメラミクニのサムライとして乗り込んでみるってのはどうだ?
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
フェンシング……西洋剣術か。悪くはないが、どうせなら文系の部活がいいな。そういうお前はどうなんだ
リオルド・アシュクロフト
リオルド・アシュクロフト
俺は実家でもやってたアーチェリー……スメラミクニでいう弓術だな! そうだ、お前も来ないか? 弓、できるんだろう? 一流のサムライなら剣も弓もできるものだと聞いているぞ
弓を引くような仕草をしながらはしゃぐリオルドに、蒼司郎は冷たく返事をする。
緋野蒼司郎
緋野蒼司郎
お前、俺の話聞いてないだろ。俺は、文系の部活がいいんだ。そうだな……西洋の本がたくさん読めるような、そんな部活がいい

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