第53話

長年の想い
292
2018/05/01 23:24
忘れていた想いはーこんな時に甦ってきた。
本当に突然だ。
それでも私はー伸太朗を愛してる
磨衣
あぁ、育お前さ
体調大丈夫なのか?
小せぇ時は入院までなかったろ
磨衣は私の体の事を知っている。
小さい頃から体の面でも面倒を見てもらったし
うん、大丈夫だよ
磨衣
そうか、なら良いんだ
ウソだ。
私は嘘をついた。
大丈夫なわけない。
私の残された命はあと僅か。
まだ伸太朗と一緒にいたいのに。
こんな時に、磨衣と会うし。
磨衣
なぁ、育。
なぁに?
磨衣
ーき…だ。
小さい声で呟く磨衣の声を聞き取れなかった
木?
いきなりどうしたの?
そんな険しい顔しちゃって
磨衣
っーちげぇよ!!
いきなり怒鳴り、磨衣はベンチから立ち上がる
そして、ベンチ越しに壁ドン…いや椅子ドンをする
へっ…!?磨衣…?
ど、どうしたのよ…さっきから…
磨衣
好きだ、育。
ー小さい時から…ずっと!
引っ越しんとき…本当にイヤだった
お前の側をはなれたくなかった
それでも笑顔でお前の側から
離れるって…辛かった…
磨衣はずっと笑ってて引っ越しなんて平気なんだと
ずっと思っていた
でも……こんなんになるなんて思いもしなかったよ…
磨衣
なぁ、育
俺はお前をずっと想ってきた…
何処にいるのかすらもわからなくて
探す宛もなかった。
だけど、そんな時この病院でお前を
見つけて…。
磨衣
引き下がれねぇ、って思った
何がなんでも守らなきゃな…
って思ったんだ
私はー磨衣の想いを知らなかった。
ずっと…ずっと。
だけど、私には伸太朗が…
何も答えることが出来ず固まっているとー
ひな
育ちゃーん!
病室に戻る時間だよ!
あ、はいっ!!!
ーごめん、磨衣!
返事…また今度でいいかな?
そう言って逃げようとすると磨衣は育の手を掴んだ
そして、なにかを握らせた。
………?
磨衣
俺の病室番号と、電話番号。
ちゃんと、登録しろよ?
磨衣はそう言うと、ベンチから立ちリハビリ室へと
戻っていってしまった
っ………。
磨衣…なんでそんな…
磨衣から渡された紙を握りしめ思う
私には…伸太朗がいるんだ。
伸太朗の気持ちを裏切るようなことはしたくない
それに今私は伸太朗が好きなんだから…
ひな
育ちゃん?
どうしたの、そんな険しい顔して
ほら、車椅子乗って
ひなさんは、相変わらず笑顔で笑ってくれる
これから…どうしよう…。
そう考えていると、昔の事が甦ってきたー

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