第59話

兄弟の力
333
2018/05/06 05:07
土砂降りの雨のなか…
歪む地を踏み込み、力一杯に走る。
伸太朗
こんな…所にいるのか!?
育………無事でいろよ………!
まだ…この物語を…終わらせるわけにはいかないんだ
育…お前と沢山の物語を創らないといけないんだ
まだまだ…白紙のページが沢山残ってるんだよ!?
そのページをお前との思い出で埋めるまで…
いや埋めても新しく物語を創って死なせねぇ!
そう…物語は…自分たちで創り上げるものだ…
1ページ目から決まっている訳じゃない。
だから…生き方だって、死ぬときもオレたちの
ー自由だろ…!?!?
だから、誰にもオレたちの自由な恋を終わらせる
ことは不可能なんだっ!!
伸太朗
っ…はぁ…はぁ!
すげぇ道に入ってきたな…。
…ん…?なんだあれ…
茂みのなかにキラキラと光るモノ
近づいて手に取ってみる
伸太朗
これ…!
オレが育にあげたネックレス…
ありがとよ、育。
道を示してくれたんだな…
きっと、この先にいる。
育のネックレスが道を指し示すように自然と足が
ある方向へと進んでいく。
そして、自然と足が止まった先は小さな…
壊れかけの家だった。
伸太朗
ま、まさか…ここに?
ギィィィィとドアは軋む音を立てて開く。
室内には、二人の倒れた姿が。
伸太朗
っ!?!?
おいっ!おいっ!!
育!育!?しっかりしろ!
お前…服は!?
もう一人の男には目もくれず育に駆け寄る
そして自分の羽織っていた薄いパーカーを被せる
伸太朗…来て…くれた…んだね 
私…来てくれ…るって…信じ…てた
だから…伸太朗が…来るまで…
目は…閉じれ…ない…なって…
苦しそうな笑みを浮かべ、意識を手放した育
伸太朗
おいっ…ウソだろ………!?
ここで発作かよ………!?
この男…何してくれてんだよ!
横たわる男の胸ぐらを掴み殴ろうとした。
しかし一瞬触れた首もとは熱く、息も荒い。
熱をだし、寝ているようだ。
よく見ると足は赤く腫れ上がっていた。
服も泥だらけで、転んだようだ。
この男の上に被っている服は育のモノだろう
伸太朗
どうやって連れて帰るんだよ!
二人なんて無理だぞ?
もう一人は…湖乃木だっけな?
オレより背ぇ高けぇし…
せめて…育だけでも。
病院に少しでも早く連れ戻さないと命が危ない
すると、家の外から声がした。
そして勢いよくドアが開く
伸太朗
うわっ!?ビックリした…
って、に、兄さん!?
松葉杖をついて歩く祐太郎は雨で
びっしょり濡れていた。
しかしーまさかここに来るなんて…。
これも兄弟ってやつなのか…?
伸太朗にやられた傷はまだ残っているようで
祐太郎
シンが慌ただしく病院内を
駆け回るからオレのところに
苦情が来やがったんだよ。
なにかと思って追いかけりゃ…
伸太朗
一緒に運んでくれるか?
祐太郎
そのつもりで来たんだけど?
急ぐぞ、もうじき暗くなる。
じゃあ、オレは育ちゃ…
伸太朗
却下。兄さんはこの男で。
兄さんの方がオレよりも背高いだろ?
自分よりデカイ男を運ぶなんぞ無理がある。
それに育を他の男に、触らせる気は一切無い
祐太郎
そう言われると思ったよ。
じゃあ今度育ちゃんとオレの
二人きりでアイスでも食べに
行かせてもらおうかな?
祐太郎は湖乃木を背負いながら言う
伸太朗
それも却下だ。
アイスを食べに行くのはオレだ。
育を背負いながら言う伸太朗。
育とアイスを食べに行く予定なんかないけど…
祐太郎
なんか、シンお前…
前よりもオレに歯向かえる
ようになったか?
伸太朗
そりゃぁな?
大切な人くらい自分で守るさ
ー守れなかったけど
祐太郎
そうだな…。
この湖乃木ってやつには
お仕置きが必要だな
病院に帰っ…めを覚ましたら育には近づかないよう
きつくお仕置きだな。
兄弟二人は雨のなか病院へと戻っていった。
翌日…起こる事態があることも知らずにー…

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