麻紗音さんとの会話を終え由宇南ちゃんのいる
病室へと戻った
育は言葉を失った。
この10分弱でこんなことになるなんて…
物音もなにも聞こえなかった
途切れ途切れの言葉を一生懸命に話す由宇南ちゃん
胸をぎゅっと掴み痛みを我慢している
育は急いでナースコールを押す。
誰か…由宇南ちゃんを…助けて上げて…
私には…神様はいない。
だけど、由宇南ちゃんには神様が降りてきてほしい
私は…いらないから。
麻紗音さんは病室が騒がしいことに気付き
戻ってきたらしい
すると、看護師さんたちが病室に慌ただしく
入っていく。
病室を追い出され、車椅子をイスの近くまで動かす
涙が溢れてくる。
自分と同じ病気だから、自分もこんな風に
なっていると思うとやっぱり怖い
でも、私の場合はもっと病状が悪いから…
そう聞こえてくる声は、私の神様で。
育は伸太朗に抱きつく。
この温もり…
本当に安心するなぁ
伸太朗はこんなときでも笑っている。
もう…磨衣と同じじゃん…
でも伸太朗は私にいつでも寄り添ってくれる
それだけで…安らぐんだ。
伸太朗…君の方がなにか力を持っていると思う
伸太朗がいるだけで安心できるから
………………………………
車椅子に乗った育の肩を揺らす
伸太朗はそう呟くと眠る育の頬にそっとキスをした
伸太朗は自分のした行動に恥ずかしくなり赤くなる
好きすぎて壊れてしまいそうだ…。
育と出会ってからオレは壊れたな…。
そう心で思いつつ育を病室に運びベッドに寝かした
きっと今日学校サボったことを流たちに
怒こられそうだな…
絶対、オレたちの邪魔はさせないーと…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。