第64話

神様を
300
2018/05/09 03:54
麻紗音さんとの会話を終え由宇南ちゃんのいる
病室へと戻った
由宇南ちゃん、お待た…
育は言葉を失った。
この10分弱でこんなことになるなんて…
物音もなにも聞こえなかった
由宇南
お姉…ちゃん…
由宇南…宿題…終わら…せた…よ
途切れ途切れの言葉を一生懸命に話す由宇南ちゃん
胸をぎゅっと掴み痛みを我慢している
そんなっ…宿題なんてっ…!
由宇南ちゃんの体調の方が
大切でしょっ!?
育は急いでナースコールを押す。
誰か…由宇南ちゃんを…助けて上げて…
私には…神様はいない。
だけど、由宇南ちゃんには神様が降りてきてほしい
私は…いらないから。
由宇南
んんんっ…!
ぅぅぅ…お兄ちゃん…!
麻紗音
由宇南、大丈夫!?
お兄ちゃんが側にいるからな…
麻紗音さんは病室が騒がしいことに気付き
戻ってきたらしい
すると、看護師さんたちが病室に慌ただしく
入っていく。
看護師
ごめんね、育ちゃん
出てもらってもいいかな?
…はい………。
病室を追い出され、車椅子をイスの近くまで動かす
由宇南…ちゃんっ…
うぅっ…死なないで……やだよ…
涙が溢れてくる。
自分と同じ病気だから、自分もこんな風に
なっていると思うとやっぱり怖い
でも、私の場合はもっと病状が悪いから…
お願い…神様…
由宇南ちゃんを…助けて…
???
おい、なに泣いてんだよ
そう聞こえてくる声は、私の神様で。
伸太…朗ぅ
どうしよぉ…うぅっ
死んじゃうぅ
育は伸太朗に抱きつく。
この温もり…
本当に安心するなぁ
伸太朗
お、おい…どうしたんだよ…
なにか…あったのか…?
ここ育の病室じゃねぇし
私の…友達…がぁぁ
同じ病気なの…私と…うぅ
いま…病状がぁ…悪化して…あぅぅ
伸太朗
落ち着けよ、育。
大丈夫だからさ、きっと。
オレがついてるんだし!
伸太朗はこんなときでも笑っている。
もう…磨衣と同じじゃん…
でも伸太朗は私にいつでも寄り添ってくれる
それだけで…安らぐんだ。
伸太朗…君の方がなにか力を持っていると思う
伸太朗がいるだけで安心できるから
………………………………
伸太朗
おい…育?
車椅子に乗った育の肩を揺らす
伸太朗
寝た…?
泣き疲れたのか………。
本当に…隙だらけだな
伸太朗はそう呟くと眠る育の頬にそっとキスをした
伸太朗は自分のした行動に恥ずかしくなり赤くなる
伸太朗
(なにやってんだろ…オレ…)
好きすぎて壊れてしまいそうだ…。
育と出会ってからオレは壊れたな…。
そう心で思いつつ育を病室に運びベッドに寝かした
きっと今日学校サボったことを流たちに
怒こられそうだな…
伸太朗
早く学校来いよ
待ってるからな…。
絶対、オレたちの邪魔はさせないーと…。

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