第57話

山奥、雨のなか
315
2018/06/12 23:22
扉を開けた………。
ガランとした部屋に暖かい風が吹く
伸太朗
ウソだろ………?
まさかあそこから飛び降りたのか…
だが、幸いなことにここは二階。
しかし育は歩けない。
だとすると相手は育を担ぐかおぶる。
伸太朗
それだけは嫌だ………!
っーかオレでもおんぶとかしたこと
ねぇのに………!?
許さねぇ…!!
相手は…誰なのか
それを調べたらソイツが行きそうな所を汲まなく
探すのみ。
伸太朗
拐わらて、そんなときに
発作でも育が起こしたらどうすんだ…
逆に育の余命を削るだけだ。
それだけは避けたい。
育はー…渡さねぇ!!!!!!!
…………………………
磨衣っ………磨衣っ!!
ねぇっ!磨衣ってば!
磨衣
んだよ!?
やめてっ!
降ろしてってば!
磨衣は歩けない育を片手で背負いながら走る
磨衣
降ろさねぇ
追い討ちをかけるように冷たい雨が降り注ぐ
いつの間にか、場所は山の中に入っている
なんでっ………
なんで拐うなんて…!!
磨衣
そうでもしなきゃ、お前を
手にいれることは出来ない。だろ?
そこまでしなくたって…!!
冷たい雨が全身を濡らす。
ねぇ、磨衣
何処に向かっているのよ…
きゃぁぁぁっ!?
いきなり、磨衣の姿勢が低くなりびしょ濡れの道に
身を投げ出される。
雨のせいで道が滑りやすくなっている
だから磨衣は滑って転んだようだ
磨衣
いっつ…
大丈夫…磨衣?
磨衣
あぁ、平気さ。
今日は…ここに寝泊まりだな
磨衣が指差したのは壊れかけの家。
まさか…こんなことになるなんて…
ひなさんも怒るよぉ…
磨衣
そうなったら全部俺のせいにしろ
俺のしたことだしな。
っー…!!!
おい、育こっち向くな…
はい?なんでよ?
っー!!
育は気づいた。
雨に、濡れ服が透けていた。
こっち見るなっ!!
ぜ、絶対向いちゃだめ…だよ!
こんな姿見られたくない…!
伸太朗にも見られたことないのに…
磨衣
っ………!!
育っ!!
磨衣は壁に寄りかかる育に向かって壁ドンをした
ちょっ………!?
こっち来ないでっ…!
磨衣
好きだ。
お前を諦められるわけ…な…い…だろ
磨衣はそう告げるとバタンッと床に倒れてしまった
磨衣…?…っ!?
この足…まさかさっき転んだとき…
しかもヒドイ熱…この雨で…。
歩けない私じゃ磨衣を病院に連れ戻すことは不可能 
携帯も…病院に置いてきちゃったから人も
呼べないし…どうすればいいの…?
磨衣
俺の…ことは気にしないで…
服…脱げ…
はいっ!?
な、なに言ってるのよっ!?
磨衣
ち、ちげぇよ…!!
お前まで…風邪…引かれたら…困る
磨衣は額から汗をかき、頬も赤い。
相当熱は高そうだ。
呼吸も荒くなっている
私のことは、心配要らない。
今は自分のことを気にかけて。
育は、自分の服を脱ぎ磨衣に被せる。
患者専用の服を来ていたためキャミソール姿に
なってしまうが、磨衣のためだ。
磨衣
お前…風邪引くぞ…?
俺なんかに…構うな…よ
静かに。
今は安静にするのみ!
ここには何もないから洋服を
貸すくらいしかできないもの。
黙って借りときなさい。
それに…私は昔磨衣を守るって
言ったじゃない。
少しくらい守らせてよ。
磨衣
っー…ははっ…
全く…バカは…バカだな…
この歳になってまでお前に
守られるとはな…
そう言うと、磨衣は眠りに着いた。
眠らない方が逆におかしいもの。
こんだけ熱だして眠くならないはずはないからだ
全く…無茶するから…。
私なんか拐ったって気持ちは
変わらないんだよ…?
私は伸太朗が好…うっ!?
ーウソでしょ…?
こ、こんな時に…発作…!?
最近安定していたから平気かと思っていたけど…
誰もいないし、薬もない…。
っ…!!
うぅぅぅぅっ!?
…はぁ…はぁ…っっっ!
胸が…苦しい…痛い…!!!!!
頭が割れそう…!
こんな時に…最悪だね… 
伸太朗…助け…て…。
私と…磨衣を…助け……て…せめて…磨衣…だけでも…

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