その声を聞いて我に帰る
慌てて涙をゴシゴシと拭く育
目を赤く充血させ、無理に笑う育を見ているのが
正直辛かった
でもーどう声をかけてやればいいのかわからなくて
ただ、無言で抱き締めた
抱き締められた伸太朗の体は濡れていた
ーどんだけ…私のために急いで来てくれたんだろ…
いまならー言えるかもしれない
気づけば、また涙で顔が濡れているー
ーぐうの音もでない…正論だよ…
大切な人くらい…最後くらい…守らせてよ…
そして伸太朗は優しくキスをした
私、伸太朗には敵わないよ…
どんなに歯向かおうが、闘おうが。
全て覆してやっぱり好きっていう気持ちだけが
勝って譲らないの
私はー恋なんてしちゃいけない立場にある。
なのにその掟さえも破ってあなたに溺れた
ーそんな許されない罰を受けなきゃいけないのに
私はーこんなに誰よりも幸せで良いの…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!