第124話

全てを受け止める
291
2018/07/10 10:11
伸太朗
育…育!!
大丈夫か……?
その声を聞いて我に帰る
し、伸太朗っ……!!
い、居たの!?
慌てて涙をゴシゴシと拭く育
恥ずかしい姿…見られちゃったなぁ
あはは……
目を赤く充血させ、無理に笑う育を見ているのが
正直辛かった
でもーどう声をかけてやればいいのかわからなくて
ただ、無言で抱き締めた
伸太朗……?
伸太朗
オレっ……苦しい…辛い……よ
育が溜め込んで1人苦しんでるの
を見るのは…オレ辛いんだ…
育…辛いなら正直に言えよっ…
何のためにオレが…俺と言う
存在が…あると思ってんだよ…
抱き締められた伸太朗の体は濡れていた
ーどんだけ…私のために急いで来てくれたんだろ…
びしょびしょ…だね…
ありがとぉ…でもさぁ…
私なんかのためにこんな…に
頑張らないでよ…
いまならー言えるかもしれない
私1人のために伸太朗の人生…
壊したくないの…いやだよ…
伸太朗は…まだまだ先があるの…
私なんて…忘れてよ…ねぇっ!
いない存在でいいよぉ!!
だから…自由に生きてよぉぉ!!
私の我儘に付き合わなくてもいい
もう……私に好きなんて言葉を
言わなくてもいいっ…!!
私と別れてよっ!!
伸太朗の人生、私なんかが
壊したくないっ!!
それほど…大切だから…お願いだから…
気づけば、また涙で顔が濡れているー
伸太朗
そのお願い…聞けねぇよ
なにがあっても…それは
叶えられねぇ…!!!
じゃあさ、何で育はオレと
別れたいなんて言ってるのに
泣いてんだよ!?
それほど大切だから…??
そんな事言えるのはまだオレのこと
好きだからだろ!?!?
ーぐうの音もでない…正論だよ…
伸太朗
オレの人生…?
勝手に決めんじゃねぇ!!
オレの人生は全て『育』という
存在から出来てんだよ!!
勝手にオレを…捨てるなよ…
両思いで…こんなに好きなのに…
別れるなんて…無理だ…
ごめん…私…
でも伸太朗、壊したくない…よ
大切な人くらい…最後くらい…守らせてよ…
伸太朗
壊せばいいさ…
なんでも受け止めて再生して
何度だって育を好きでいる…
お前がいなくなってもー永久に…
そして伸太朗は優しくキスをした
私、伸太朗には敵わないよ…
どんなに歯向かおうが、闘おうが。
全て覆してやっぱり好きっていう気持ちだけが
勝って譲らないの
私はー恋なんてしちゃいけない立場にある。
なのにその掟さえも破ってあなたに溺れた
ーそんな許されない罰を受けなきゃいけないのに
私はーこんなに誰よりも幸せで良いの…?

プリ小説オーディオドラマ