第55話

鮮明に思い出した記憶
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2018/05/04 10:51
海に行った次の日、育は磨衣の家へ向かった
しかし、磨衣の家の前には大きなトラックがあった
そして何やら忙しそうに色んな人が出入りしている
そして、その中から磨衣の姿も見えた
あっ!まい!
ねぇねぇ、あそぼうよ!
磨衣
育ー………。
磨衣は育の姿を見るなり顔を下に下げた
まいー?げんきないの?
いくといっしょにあそべば
げんきでるよ!
育は、磨衣の手を握っていう。
すると磨衣は育の手を握り返ししゃがんだ
磨衣
いいか、育。
大切な…大切な話をするぞ
うん、どうしたの?
磨衣
今日から一緒に遊ぶのはコイツだ。
そう言って、磨衣が連れてきたのは
美和、という女の子であった。
どうして?まいはあそばないの?
磨衣
育………。
どんなに離れていても俺のこと
忘れるなよ…?
いつか、迎えに来るから。
その時までバイバイだ。
磨衣はそう言うと、立ち上がり大きなトラックに
乗り込んだ
まい?…まいっ!!!!! 
なんで!?
どこにいっちゃうの!?
あそぼうよ!
磨衣はトラックの窓を開け顔を出した。
ーそして、育に向かって微笑んだ
いくのこと…まもってくれるって
いったじゃん…!
まいのウソつき!!
磨衣
ごめん…育。
いつか…いつか会えるから…ね
その時は…俺の彼女になれよ…。
磨衣の呟いた最後の言葉はトラックの発進音と共に
消し去られ、育と美和の元には届かなかった
まい………
美和
ねぇねぇ、いくちゃん
あしたはいっしょにあそぼうよ!
きょうはやすんでね
美和ちゃんは育に告げると歩っていってしまった
そう、このときから私と美和ちゃんは親友だった
親友になれたのも磨衣のお陰だ
育は、磨衣はすぐに帰ってくるものだと思っていた
2年生にはまだ理解できないことだったが
3年生に上がるときにはもう、理解していた
磨衣はもう、帰ってこないーと。
………………………………
鮮明に思い出した、過去のこと。
今まで………どうしてこんなにもキレイに
忘れていたのだろう…?
どうして、今になって思い出したのか………
私………どうして…
磨衣のこと忘れていたのかな…?
ひな
どうしたの育ちゃん?
あ、いや…
ひな
磨衣って、今言った…?
それってこの病院にいる
湖乃木 磨衣くん?
そして、ひなさんはこう言った
ひな
そうそう!
磨衣くんね、私が育ちゃんの
担当してること知ったとたんに
育ちゃんに会いたい、会いたいって
言ってて、聞かなかったのよ
な、なんてことを… 
私に会いたいなんてそんなん…
ひな
その調子なら会えたみたいね
よかったわ
ひなさんは、病室に着くとニコッとして
病室を後にした
はぁぁぁぁ… 
困るんだよ…そういうの
育は磨衣から渡された紙を手の内で握る
そしてークシャっとなった紙を開いた。
病室番号一棟126番…
早く、磨衣の病室に行って伝えよう。
迷う必要なんて無かったのに何悩んでいたのだろう
きっぱり、はっきりと断ろう。
ーそれが私の答えだ

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