第120話

前だけを見て進む
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2018/07/05 13:23
真っ白い空間に、色の無い部屋ー
また……ここに戻ってきた
なにも無いし色もない。
外の世界は…楽しかったなぁ…
みんなでワイワイ楽しくやって来た日々が蘇る度に
ひどく胸が締め付けられる
あとー私の余命は……
どのくらいなの……?
……………………………………………
育のいなくなった学校は色がない。
本当に詰まらなくなってしまったー
シンタロー……
次移動教室だぞ…?
はやく移動しないと遅れる
宇良羅
最近……元気無いね…?
育ちゃんもここのところ
学校にも来てないし……
何かあったの?
なにも知らない宇良羅は呟いた
伸太朗
ごめん、オレ次の授業休むわ
流伝えといてくれ
伸太朗はそれだけ言い残し教室から立ち去る
そんなんだと美澄も
悲しむだろーが……………
宇良羅
ねぇ………美和ちゃん
何があったのか宇良羅に
教えてくれないかな……?
徐々に心配になってくる宇良羅は美和に尋ねる
美和
わかった、昼休み屋上で。
流も一緒に屋上でご飯
食べながら話そう?
おう、じゃあ移動しないと。
まじで遅れる。
………………………………………
保健室のベッドに寝そべる伸太朗
伸太朗
…………………………
こんなんで医者になれる訳がねぇよな……………
医者はすごいよな、本当に。
人が死んでもまったく乗じない。
今でさえ、育は死んでもいないのにこんな状態
だなんて、医者になんてなれない
先生
あらぁ、また青宮くん
ここに来てたのね?
ここ最近来る回数多くないかしら?
来る回数が増えたため、保健室の先生には
よく知られている
伸太朗
あぁ……。
ちょっと……な
先生
ちょっとどころじゃないでしょ?
原因は『美澄 育』
持ち病に犯され余命は
決して長くないー。
彼女を愛しすぎたゆえショックが
大きい……と。
保健室の先生はズラッと全てを話した
伸太朗
な、なんで……そのことを……
先生
情報提供ー『九条 流』
文句ならそちらにね?
自ら話したのよ、九条くんが。
あ、アイツ……!!!
無駄なこと言いやがって……覚えてろよ…?
先生
でもーあなたを心配している。
誰よりも、九条くんは心配してるわ
伸太朗
流……が……?
結構、クールで無口な方な流がそんなことをー?
先生
九条くんはあなたが医者に
なりたいってこと知ってるわよ
ーその将来を全力で応援してる
彼女思いの素敵なあなたなら
きっと素晴らしい医者になれるって。
先生
だーかーらっ!
しっかり夢を見失なずに
それだけを見て前に進みなさい!
今時、ちゃんとした夢を持ってる子
は少ないんだから!
前だけをみてー……進む……
伸太朗
ありがとうございます!
なんかー楽になった……
一人で抱え込みすぎてたのかな…?
先生
お礼なら、九条くんに言って。
あの子が頑張ったんだからね
ほらー次の授業はちゃんとでるのよ
ーあ、次はお昼だったわね!
その先生の笑顔や流の思いー……回りの人に救われて
ばかりだな……オレは……
だからこそー思ったんだ
医者になって支えてくれた人、助けてくれた人に
恩返しをしようーと
だからその一歩として、医者なることを諦めない!
………………………………
美澄 育よりっ………と…
『手紙』なら…私が生きたことー
忘れずに…過ごしてくれる…よね?
『美和ちゃん』『九条くん』『裕くん』
『ひなさん』『宇良羅ちゃん』『先生』
『磨依』『麻紗音さん』『お母さん』
そしてー『伸太朗』
書き上げた十枚の封筒を見渡してー微笑んだ

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