第110話

強く握られた腕
279
2018/06/24 23:25
伸太朗が頭を冷やしに、どこかへ行ってしまった
私は、沈んだ気持ちで裕くんの出してくれた車に
乗り込む
祐太郎
おぉ、おかえり!
今日は楽しかっ……
シン…は……………?
ううん……ちょっと…ね 
祐太郎
ケンカしたのか……
はぁ……アイツも素直じゃねーからな
やれやれ、とでも言いたそうに祐太郎は言った
まって“も”って私も素直じゃ
ないみたいに言わないでよぉ!
祐太郎
オレは、育ちゃん結構素直じゃ
ないと思ってるけど?
自覚症状は無いみたいだね
祐太郎
それにしてもー……
二人がケンカ、なんて
するなんて予想外だったなぁ
祐太郎の言葉に、育はうつむく
私っ……………
どうしよう……伸太朗のこと…
傷つけた……。
祐太郎
そう思うなら追いかけてごらん?
シンは、優しいからさ。
きっとそう怒ってなんかないさ
ちょっと、行ってきます!
ありがとう、裕くん!
乱暴に車のドアを開き飛び出していく。
祐太郎
ホント、妬けちゃうなぁ……
育ちゃんが恋した人が
オレだったらそんな悲しいこと
させないのに……なんてね
祐太郎
今のオレには……ひながいるから
幸せにしないと……な
……………………………………………………
はぁっ、はぁっ……
伸太朗……何処に行ったんだろ…
ショッピングセンターの外を駆け回る育。
ー日は暮れ始めているためお客さんは多少
少なくなっている。
電話……しようかな……
そう思い、電話をかけるがー出なかった
そうだよね……
私、心配してくれてる伸太朗を
傷つけた……電話に出てくれる
なんて甘いこと考えちゃダメだよね
うつむいていた顔を前に上げたときだったー
…………………!?
なんでここにいるの“磨依”…?
見覚えのある顔だなぁと思ったがその正体は
すぐにわかった
磨衣
あーれ?育じゃーん!
奇遇だねー!
どうしてここに……?
磨依はここから少し遠い所に
引っ越したんだよね……?
磨衣
あー、ただの買い物♪
磨依は持っている袋を持ち上げ育に見せる
磨衣
そーいや、なんか目ぇ赤くね?
育がなんで一人でいるんだよ
あ、赤くなんてっ………ないから…!
ひ、一人でいるときもあるからっ
バッと、手で顔を隠す
しかし、パシッと磨依にその腕を押さえ込まれ
露になった瞳を覗き込む
磨衣
泣かされた……のか?
強く握られた腕から、磨依の手に力が入っている
のがわかった。
ちょっ……痛…い磨依
磨衣
この前は、育を拐った罪を
償わされたけど、今度は
アイツに償ってもらおうかな?
『育を傷つけ、泣かせた罪』ってね
磨……依っ!!
やめて、伸太朗は…………
何も……何も悪くないっ!
すると、磨依は育の腕を掴んだまま歩き始めた
ちょっと……磨依!
何処にいくつもりなの!?
はっ、離して……………!
磨衣
青宮って言ったけな?
ちょっと話したいことがあるから
オレは育を傷つけ、泣かせたこと
許したくねーしそんなヤツが彼氏
だと思うと、腹が立って仕方ねぇ♪
磨依は、育をその場にあった椅子に座らせた
磨依……………やめて…
伸太朗は悪くない……………
私が全部悪いの……!!
だって、伸太朗は……ん?
いきなりポケットに入っていた携帯が震え出す
電話……………
伸太朗からだっ!!
あっ、ちょっ!?
電話に出ようとしたら携帯を磨依に取られ代わりに
磨依が電話に出る
伸太朗
もしもし、育?
さっき電話かかってきたの
気づかなかった……そのごめん
育に、伸太朗の声は届かない。
電話に出た主、磨依が口を開いた
磨衣
ごめん……………?
お前何言ってんの?
テメェが育、傷つけ泣かせた。
お前が育に電話をかける資格は
無ぇんだよ!
ま、磨依っ!!いい加減にして!
携帯返してよっ!!
伸太朗
お前……………湖乃木か?
なんで、お前が電話に出てるんだよ
つーか何の用だ?
磨衣
オレが、育の側にいることに
妬いちゃって心配してるのかな?
ー安心しなよ、伸太朗くん。
育はオレが幸せにするから
磨依はそう言うと、電話を切った
どうしよう……………せっかくのお泊まりなのに
磨依と会ってしまったから……………
いや、私のせいで…台無しになって
しまうかもしれない…

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