伸太朗が頭を冷やしに、どこかへ行ってしまった
私は、沈んだ気持ちで裕くんの出してくれた車に
乗り込む
やれやれ、とでも言いたそうに祐太郎は言った
祐太郎の言葉に、育はうつむく
乱暴に車のドアを開き飛び出していく。
……………………………………………………
ショッピングセンターの外を駆け回る育。
ー日は暮れ始めているためお客さんは多少
少なくなっている。
そう思い、電話をかけるがー出なかった
うつむいていた顔を前に上げたときだったー
見覚えのある顔だなぁと思ったがその正体は
すぐにわかった
磨依は持っている袋を持ち上げ育に見せる
バッと、手で顔を隠す
しかし、パシッと磨依にその腕を押さえ込まれ
露になった瞳を覗き込む
強く握られた腕から、磨依の手に力が入っている
のがわかった。
すると、磨依は育の腕を掴んだまま歩き始めた
磨依は、育をその場にあった椅子に座らせた
いきなりポケットに入っていた携帯が震え出す
電話に出ようとしたら携帯を磨依に取られ代わりに
磨依が電話に出る
育に、伸太朗の声は届かない。
電話に出た主、磨依が口を開いた
磨依はそう言うと、電話を切った
どうしよう……………せっかくのお泊まりなのに
磨依と会ってしまったから……………
いや、私のせいで…台無しになって
しまうかもしれない…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!