第103話

憎まないし、恨まない
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2018/06/18 22:40
家に帰り、ボフッとベッドに飛び込む
ううぅ……頭…痛い
心臓…痛い…うぅ…
伸太朗に…不快な思い
させちゃったかな…
あのときはーもう体が痛くて悲鳴をあげていた
だから…長時間立って話すことが辛かった
伸太朗を不安にさせるようなこと…
私…言ってないよね……?
不安に…させる言葉…
言ってたら…どうしよ…
私、今伸太朗がいなくなったら
生きていけない…
はぁ…とため息をつき携帯を取ろうとした。
ーズキン!
と、心臓が痛み鼓動が早くなる
ん゛っ!!!
思わず胸を押さえる手も強くなる
一階にいるお母さんの所まで行ける感じではない
お母さんに薬をもらうため、電話をかける
もし…もしっ…お母さん…
お母さん
ど、どうしたのよ!
息も荒いし…言葉も途切れて…
ま、まさかっ!?
今行くわ!ちょっと待ってて!
ちがっ…違うの…
薬…持ってきて…
お母さん
わ、わかったわ!
待っててね、今行くわ!
お母さんの慌てた足音が聞こえ
部屋のドアが雑に開けられる
お母さん
はい、育!!
お薬!あと、水ね!
念のため、ゼリーも!
お母さん、よくこの短時間でここまで準備出来たね
逆にすごいと思うよ…
ありがと…
飲んだ薬は、とても効き目が良い代わり
体の力を奪っていく
倒れる…訳にはいかない…から
絶対…明日は…
お母さん…明日お泊まり……行ってくる
お母さん
そんな体で行けるわけ……
大切なの。
そのお泊まり……は
きっぱりと言い張る育にお母さんは、はぁっ…と
ため息をついた
お母さん
ホント…頑固な子ね…
でも、自分の体くらい
大切にしなさいよ?
あと2週間…そのことを気遣ってかお母さんは
OKしてくれた
ありがと、お母さん…
私、お母さんの所に生まれて
良かったなぁ…
お母さん
何言ってるのよっ…!!
あなたを…こんな体で
産んでしまったのは…私たちよ…?
憎まないの…?恨まないの…?
憎まないよ、恨まないよ…
だって…大好きなんだもん…
みんなのこと…
憎むことなんて何もない…
育は水を手に取り、飲もうとしたー
しかし、水の入ったコップは手からすり抜け
床に散らばる
あっ…ご、ごめんお母さん…
手に力…入らなくて…
お母さん
良いのよ、違う薬にすれば
良かったかしら…
あの薬が一番効くから
大丈夫だよ♪
こんな生活も、きっともうすぐ終わりが来る
その前にたくさん笑って…
たくさん…感謝を伝えよう。
悔いの残らないよう…
笑顔で成仏できるようにー

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