第133話

意思を継ぐ
238
2018/07/19 03:02
家に帰った美和はすぐに部屋に閉じ籠りカバンを
開き例の手紙を取り出す
美和
育…。
私ね、まだ育がこの世にいるって
信じてるんだよ…
ホント、バカみたいだよね……
いつまでも過去にすがってさ……。
手紙にそう呟き、そっと封を開けたー
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美和ちゃんへ

これを読んでいるってことは私はもう、この世に
存在していないー。

いつも……どんなときでも隣にいたのは美和ちゃん。
私が心から親友って言えるのは美和ちゃんだけ。
いつもーありがとう。
そしてーごめんね。
やっぱり、美和ちゃんを置いて先に私は旅立った
美和ちゃんのウエディングドレス姿とか
美和ちゃんの子供とか私、見たかったなぁ……

子供とか出来たら私のお墓まで来て紹介してね!
きっと結婚相手は九条くんだよね♪

私はーこの人生に後悔なんてしてないんだ。
凄くー楽しかった。
きっとそれは美和ちゃんや伸太朗、九条くんたちが
支えてくれたりしてくれたから。
みんながいなかったら生きたいなんて思えなかった

だからーありがとう

私のことは頭の片隅くらいに入れて
覚えておいてくれるだけで十分。
美和ちゃんは自由に生きる資格があるんだから
その『自由』を大切に生きて。

私が得られなかった自由をー私の分も生きて。
そしてー前を向いて自分の進みたい未来を実現
させてね。
美和ちゃんならできるっ!
空の上からいつでも見守ってるからー。

美澄 育
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読み終わったあとにはーもう涙が溢れていた
美和
育っ…は……前を向いてるっ…のに
生きてる私がっ……前向かないで
過去ばかり見て…どうするのよ…
ーありがとぅ…育…私頑張るよ…
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九条家ー。
流も家へと帰り、育の手紙を読んでいた
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九条くんへ

この手紙を読んでいるってことは、きっと私は
存在してないー。
九条くん、いままでありがとう。
そしてー、ごめんね。

伸太朗…………きっとすぐには立ち直れないと思うの。
だからー伸太朗の一番仲の良い九条くんに
お願いがあるのー。

伸太朗を…支えてあげて。
私が生きている間は『私が伸太朗の生きる理由
になる』って約束したんだ。
だけどその約束が守られない今ー伸太朗は
何を生きる理由として生きれば良いのかわからない
ーそんな気がして、心配で夜も眠れない。

私がいなくなった世界で伸太朗はしっかり生きて
いけるのかなぁ…とか
新しい恋を始められるのかなぁ…とか。
だからー伸太朗が前を向いて進めるようになるまで
伸太朗の生きる理由になって欲しい。
九条くんだからこそ頼めるお願いなの。

そしてー美和ちゃんのことも宜しくね。
美和ちゃんはとても良い子で可愛い子だから
ずっとずっとー離さず愛してあげてー。
美和ちゃんは一人で抱えて悩むタイプだから
支えあってー未来を作って。

九条くんはしっかりモノだしきっと二人のことも
任せられるー。
勝手に死んで、押し付けたりしてごめんねー。

みんなと過ごした日々はー私の宝物…だよ。
ありがとう。

美澄 育
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オレはー美澄に重要なことを託された。
美澄の意思を継がなければならないー。

美澄の思い通りに…シンタローと美和を支えて
いかなければならないー。
オレなんかに…勤まるかな…?
そんな大役…。
少し道を踏み間違えるかもしれねぇ
そのときはー美澄…教えてくれよ
ーみんなが幸せになる道を…。
流は何気なくー無意識に蒼く澄み渡った空に
向かって手を伸ばしていた。

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