第54話

過去の記憶
299
2018/05/03 11:40
それは、暑い暑い夏の日のことー。
っはぁ、はぁっ!
まいぃぃぃ!まってよぉ!
私は当時小学生2年生で、病気もそこまで
重くなかった
磨衣
なんだよ、育!
早く来いよ!!
おいてくぞー?
磨衣は当時、小学5年生。
その時からかっこよくて学校でもモテてた
ううぅ、まいは、あし
はやいからおいつけないよぉ
そう言うといつだって、おんぶしてくれた
年齢の差もあって身長差もあったから軽々と
私を持ち上げてしまう
磨衣
よいしょっ!
育はまだ軽いから
俺が持ち上げて運んでやるよ
えへへ、ありがと!
きょうは、どこにいくの?
磨衣
そうだな…
秘密基地に行こう!
内緒で俺が作ったんだ
ひみつきちー?
なぁに、それ?
磨衣
来ればわかるよ!
ほら行くぞー!
………………………………
磨衣におぶられて行くこと20分程。
林の中にある小さな洞窟のような物があった
磨衣
ほら、着いたぞ!
わぁ!すごい!
おぉ!あっちから、うみが
みえるねぇ!!!
ねぇねぇ、まい!
うみいこうよっ!
海を見て興奮する育は目を輝かせて磨衣にすがる
磨衣
わかったよ!
じゃあ行こうか!
磨衣は育の手を取って走る
崖の上から見渡せる広大な海
太陽の光に反射して輝く水
うわぁ!きれいだねっ、まい!
そう言い、育は磨衣の手を振り払い走り出す
磨衣
うわっ!!
っあ!育!!!
走るなよ!危ない!
磨衣は引き留めようとしたが時すでに遅し
崖の下へ降りようと小さな体で下る育は途中、
足を滑らせてしまった
きゃあぁぁぁっ!!!
瞬間、磨衣は崖から飛び降り育を抱き止める
磨衣
っーー!!!
育………大丈夫か………?
まい………!
ふっえっ…うぅっ…
まいぃぃぃ!こわかったよぉ!
育は磨衣に抱きつこうとし、腕に触れた
磨衣
っっ!!
まい………?
磨衣は腕を押さえ表情を歪ます
うで…いたいの?
いくがあんなことしちゃったから…
ごめんね…
そうだ!まいのうでから
いたいの、いたいのとんでけっ!!
育は一生懸命に小さな腕を振り回し
痛みを飛ばそうとする
磨衣
ありがとうな、育。
痛いの無くなったよ!
ほんと!?
いくね、まいのことまもるから!
ずっと、ずっとまもってあげる!
海を見ながら育は磨衣にそう告げた
『ずっと』と。
磨衣
そうかー。
でも、育に守られてばっかり
は嫌だなぁ。
そして、磨衣は笑った
磨衣
俺は強くなって育を守るよ
ー好きだから…さ
好き?
いくも、まいのことだいすきだよ!
今言っても、小さな育には意味はわからないと
わかっていた。
それでもー今伝えなければもう一生伝えられないと
そう、わかっていたからだ。
明日ー、この町から俺はいなくなる。
磨衣は悲しげな瞳で海をじっと見つめたー…

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