夜ご飯の時間になって、交替で食べに行って部屋には俺と濱ちゃんとしげだけ。
誰に何を言われても、布団をぎゅっと握って考え込んだような表情をしてたしげの隣に椅子を移動させる。
さっき買った、あったかいドリンクを、しげの頬にくっつける。
なんで言えばいいのか分からへん。
どう接すればいいのかも。
やから、こんな変なことしかできひんくて。
思わず声がでた。
しげの目には、溢れそうなぐらい涙がたまってて、
瞬きする前に、頬に涙が伝った。
そう呟いたしげは、唇を噛んで、肩を震わせて泣き出した。
しげが泣きだして慌てて濱ちゃんを呼んだ。
濱ちゃんが「どうしたん?」って近づく前に、
しげは俺に抱き着いてきた。
しげの涙なんて、見たことなくて。
俺には、弱音なんか吐いたことなくて、
でも、
そんなしげが、俺に抱き着いて泣いている。
弱さを見せてくれないことに、悔しさを感じたこともあったけど、
やっぱりどこか、しげは強い人やって、弱音なんか吐かないって安心してたところもあって。
戸惑いなのか、
辛いのか、
寂しいのか、
ただのもらい泣きなのか、
俺も泣いていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。