しげと望が入院して1週間後、望は退院できることになった。
しげはまだあかんみたい。
今日はしげの担当医に呼ばれて6人で応接室に集まった。
応接室に呼ばれると毎度嫌な緊張感がある。
でも、先生が僕らに見せたものに拍子抜けした。
ぽかんと口を開けたまま、照史が首を傾げる。
先生が見せてくれたのは、関西で有名な温泉特集の切り抜き。
なぜか棒読みの濱ちゃん。
ちょっと笑う照史。
冷静なツッコミに、照史が鼻で笑う。
全員頭に?が飛んでて、しんとなって先生を一斉に見た。
先生はその後、「これ見せたのがまずかった」ってぶつぶつ言いながら説明してくれた。
つまり、しげや望のために、自然の多い場所に出かけるといいってこと。
しげにとっては特に、少しでも症状を和らげる助けになるみたい。
もちろん体調がいい日にしか出かけられないし、遠出はできないけど、「みんなもリラックスできていいと思うよ」って先生は笑顔だった。
さっきとは違い、みんなで顔を合わせて笑う。
そう言う先生に「はーい!」と返事した。
部屋を出てから、まさかの提案にみんなでハイタッチ。
「あいつめっちゃ喜ぶで~」って、みんなでしげの部屋に急いだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!