目が覚めて時計を見ると、もう昼だった。
いったい何時間寝てたんやろう。
ドアの向こうはやけに静かで、みんな仕事なんかなって思いながら起き上がる。
体はまだ熱っぽくて怠い。
ーガラ
何か食べようと思ってドアを開けたら、誰もいないと思ってたけど小瀧がいた。
小瀧は俺と目が合うとぱあっと笑顔になる。
嬉しそうな小瀧に、「昨日よりはまし」と笑って答える。
そう言いながら冷蔵庫に行こうとすると、小瀧に無理やり椅子に座らされた。
無理やり座らされたらもう立ち上がる気にはなれなくて、言われた通り座って「みんなは仕事?」と聞きながら動く小瀧を目で追う。
小瀧はそう言って笑いながら、「はい!」と机にお皿を置いた。
濱ちゃんの作ったシチューは、野菜の切り方が雑で、でっかいにんじんがあったかと思えばみじん切りしたんかと思うほど小さい玉ねぎやかぼちゃが出てきたりする。
ん・・・・?
昨日は煮物を作ってたはず。
不思議に思って聞いたら、小瀧が苦笑い。
そう言いながら小瀧は「おもろかった」と笑ってる。
じゃあ俺だけか。
昨日のあのおいしい煮物を食べられたんは。
嬉しいながらも、
俺の世話でいっぱいいっぱいで火を止めるのを忘れて怒られてしまった濱ちゃんに、申し訳ない気持ちでいっぱい。
でも、
そんな優しい濱ちゃんの作ってくれたシチューは、
おかんの作った味とは違うけれど、
めっちゃ優しくてあたたかかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。