
第10話
濱田side
しげのおとんが預けてくれたバックの中から薬を探してたら、「どうしたん?」と照史がリビングに入ってきた。
しげのことを話したら、心配そうに寝室を見る照史。
ふとつぶやいた言葉に、照史が「え?」と僕を見たけど、「なんでもない」と目をそらした。
しげを抱えたとき、あまりの軽さに声がでそうになった。
それに、この薬の多さ。
今までは「あー、飲んでるなぁ」ぐらいにしか思ってなかったけど、1日にたくさん飲む薬は俺にはよおわからへんような役割があって、その薬1つ1つに副作用があって。
そりゃ、今までやってしげが病気やって分かってはいたけど、
本当の意味では分かってなかった。
しげが感じる痛みや辛さ、きっと、体だけじゃなく感じる痛みは、
あの笑顔に全部消されてた。
薬を持って部屋に入ったら、しげは眠ってた。
でも、しげの左手が不自然にこっちに伸びてて、顔を傾げる。
不思議に思いながら腕を布団の中に入れてあげたとき、ふと見たしげの頬には涙の痕があった。
もしかして、一人にしてほしくなかったんやろか。
部屋を出る時に一瞬見た寂しそうな顔を思い出して自己嫌悪。
そう言って頭を優しく撫でる。
ほんまは、家族と離れて病気と闘うのは寂しくてしょうがないはずやし、
しげ、お前ってさ、
甘えるん上手そうやのに、めっちゃ下手くそやったりするよな。
引越の時のしげの涙を思い出して、ぎゅっと胸の奥が痛くなった。
俺ももっと強くならへんと。
しげのおとんやおかんのようにはどうやったってなられへんけど、
それでも、しげがもっと甘えられるような頼りになるお兄ちゃんになってみせるからな。
しげのピンク色の頬を撫でながら、そう誓った。
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