ー「濱ちゃん、どこにおるん・・?」
久しぶりの検査はかなり辛かったみたいで、望はそう言ったらしい。
照史が申し訳なさそうに病室に入ってきて、「望が泣いてる」そう言われた時は動揺して、ダッシュで望の所に行ってやりたいと思った。
でも、ぎゅっと握られた手を、離すことなんてできなくて。
そう言うと、照史は「でも・・」と頭を掻いた。
望が俺を慕ってくれてるのも、
望が俺には甘えやすいことも、
ちゃんと分かってる。
望が辛いんならそばにおってやりたいし、望が俺にそばにいてほしいと願うんなら、そばにおってやりたい。
でも、
しげの涙と、伸ばされた手がよぎる。
傍にいてほしかったのに、俺はいてやれなかった。
ふいに響いた声に、はっとしげを見ると、しげは握る手の力を弱めた。
「でも」そう言おうとする前に、しげは手を離した。
ね?と微笑むしげに、背中を押されるように病室を出た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。