いつの間にか眠ってた。
今何時やろう。
誰かが胸をさすってくれてる。
びっくりして頭を動かすと、そこには驚いた顔のしげがいた。
左手には俺の漫画、右手はさすってくれてる。
二人重なって、でも笑える余裕など俺にはなくて、もう一度「何時なん?」って時計見たら、
夜中の3時。
まさかの時間に大声を出すと、しげが「しーっ」と下の部屋を気にする。
そう言いながら漫画を閉じてあぐらをかく。
また重なって、反射的に笑ってしまうと、しげも嬉しそうに笑った。
先に言われて、なんで気付かれてたんやろう、って思いながらも、「一昨日からずっと治ってへんし」って自分でも嫌になるほどふてくされた声がでる。
しげは、そっか、って頷くと、きちんと整理した本棚からあふれた漫画を指さして笑った。
昔っからこう。
しげは、こういう空気の時、喋りすぎる。
うるさくて、
そんなところが、
イライラする。
ああ、ほんま、なんでこんなことしか言えへんねやろう。
こんなこと言ってしまうから、
言い合いになるんや。
分かってる。
分かってるよ、そんなこと。
そんな声に顔を上げると、しげはさっきとは変わって真面目な顔をしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!