少し時間が経ち 外に行こうと思い看護師さんから許可をもらい中庭に行った
春と一瞬で分かるようなそんな雰囲気が漂っていた。
「心地いいなぁ……あ」
小さな黄色い花が咲いていた
「…えっと……」っと考えていると
「可愛いよな〜たんぽぽって。」
後ろから声が聞こえ振り返ると 男の人がいた
「たんぽぽ……」
「なんや?たんぽぽ知らんの?へぇ〜 今どきの女の子は扱いが分からんわ。」
あははっと笑う男の人。
少し複雑な気持ちになった。
「私、記憶障害なんです。分からないことは看護師さんから教えて貰っているんです。」
はっきり相手の目を見て言うと 「あぁ…なんかごめんな。」っと素直に謝ってくれた。
「記憶障害か……んじゃお詫びとして俺も君に教えてやろう。名前は?」
「……千鶴です。」
「俺は凛太郎。よろしく!」
そう言うと凛太郎さんは簡単だけど中庭の花の名前を教えてくれた。
無邪気に植物を眺めながら散歩をしていると
小さな花が沢山咲いていた。
「この花は?なんて言うんですか?」
「ん?この花か?勿忘草だよ。」
勿忘草…小さくていろんな色の花びらでとても綺麗だった。
「ちなみに。勿忘草の花言葉は…私を忘れないで…だ。」
微笑むと青色の花びらの勿忘草を小さな花束にしてそう言った。
その笑みに少し心臓あたりがきゅっとなった。
私はこの瞬間を忘れないでおこうと思った。
忘れてはいけない………そう感じながら。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。