そう言われて、さとみくんの姿を探すと、女の人に肩をツンツンされているさとみくんの姿が目に止まった。
あの女の人、この間さとみくんに話しかけてたメイク濃い人だ。
ジェルさんの言葉は私の耳を通り抜けていく。
さとみくん、他の人もお酒飲んだりお話してるんだ。
当たり前のことなのになんだか気に食わない。
無意識にさとみくんをじっと見つめていると、さとみくんと目が合った。
お仕事なのは分かってる。分かってるけど…
もういい、今日はジェルさんと座ろう
ジェルさんに着いて行く私を、悲しそうな顔でさとみくんが見ていたのを知らなかった。
お酒がたくさん載ったメニュー表を見せてくれたけれど、飲む気分じゃない。
私はなにも言わなかった。…言えなかった。
さとみくんは、私を無理やり立たせて扉の方へ連れていった。
真夜中の歩道は静かだ。
普通の人は今頃家で寝てるだろう。
広い道を2人で歩く。
さとみくんも怒ってるの…?
嫉妬…?
嫉妬…なのかな。
ただ、さとみくんが他の人と喋ってるのみると気分悪くなるだけ。
そう言って私を抱きしめた。
こんなに強く抱きしめられたの今日が初めてだ。
凄く暖かくて、今までのことなんて忘れちゃうような安心感。
、、?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!