第2話

2人の空間。
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2019/11/17 00:25
山の奥の家で俺と一緒に住むことになった人の子はよく働く子だった。
平日は仕事があると朝から夕方まで山から降り、平日は俺の世話をしてくれる。



満桜
あー!もう!靴下は洗い場まで持ってきてと何回も言ってるでしょー!
…言われなくても後でしてた
満桜
してくれた試しがありません!
2人で居る空間はこんなにも暖かかっただろうか。
久しぶりの感覚で戸惑ってしまう。
満桜
あ、そうだ。おひぃさんは森からは降りないんですか?一緒に買い物に行きたいです
用事がない時以外は行きたくない…それに行かなくても生きていける
満桜
田舎だから人も少ないのに…そんなんじゃ都会に行っても住めませんよ!
あほ、昔は東京にいた時もあった
満桜
え!?おひぃさん東京に居たんですか!?
…明治時代にだけどな。その時の服装が落ち着くから今もこうやってくつろぐ時は和洋折衷な服を着てるわけ
満桜
なるほど…
満桜
でも明治の東京と今の東京…というか田舎もですけど、凄く変わりましたからね!
それくらい知っている…
人の子と暮らすのはどうかと思っていたが、案外上手くやっていけている。なにより満桜は見ていて面白いほど表情がよく変わるのが良い。


だが…











人の子というのはあっという間に死ぬ。
だからあまり関わりたくなかったのに、少し近づきすぎている感じが自分でも分かる。








満桜
あっ、そろそろ俺買い物に行ってきますね
満桜
今日は寒いので、お鍋にしましょうか
あぁ、いってらっしゃい
満桜
いってきます!
マフラーを巻いて外へ出た満桜を見ながらはぁ、とため息をついてしまう。









必ずいってらっしゃいを言うようになってしまっている。人の子に慣れた証拠だ。


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5分程経っただろうか。
ポツポツと振り始めた雨が、土砂降りになった。



…雨か
っ!…あいつ、傘持って行ったか…?
急いで傘立てを確認すると、傘は置いたままだった。
昔、あいつと一緒にここまでの道がわかりやすいように木を埋めて階段を造ったが、古くなっているからあそこも滑るかもしれない。ここから下まで30分はかかる。











満桜が危ないかもしれない。







そう思った途端傘を持って走って外へ出ていた。


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▽▽
満桜
うわー、雨か…
傘を持ってくればよかったと後悔するがもう遅い。雨を凌ぐために大きな木の下へ移動する。









満桜
(こういうこともあるんだな…今度から折りたたみ傘を持って行こう)
満桜
雨の日は余計なことも考えてしまう。


おひぃさんは俺がいて迷惑じゃないだろうか。
色々注意する俺のことが嫌いじゃないだろうか。
1年後はどうするのだろうか…。


深く考えれば考えるほど傷つくのは自分なのに。












おひぃさんと1年後に別れるのが寂しいなんて。







…ぉぅ
満桜!!
満桜
っ!おひぃさん?
っ!いた…!!
俺を見つけた途端ギューッと抱きしめてきた。
よかった…無事で
満桜
ど、どうしたんですか?
…雨が降ってきたから滑って怪我しないかと思って
満桜
〜っ!
満桜
ありがとう…ございます
嬉しい。おひぃさんが俺の為に外まで走ってきてくれるなんて。
…ほら、傘
満桜
この為だけに…
…風邪を引いたらどうする
満桜
あはは、そうですよね
満桜
傘もありがとうございます
あぁ、じゃあ気をつけてな
満桜
っ!待って…!
ギュッと服の裾を掴む。
満桜
…ここまで来たのなら、一緒に買い物に行きませんか…?
…なんでそうなる
満桜
俺が一緒に行きたいんです!
…はぁ、わかった。行ってやる
満桜
っ!やった!










見てくださってありがとうございます!!
じわじわと満桜に染まっていくおひぃさんを書くの楽しいです。
次回はお買い物編です!!
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