海斗side
高校2年の俺に久しぶりに好きな人ができた。
その子は同じクラスの、「月菜」
1年のときも同じクラスで仲良くなったが、気持ちに気づいたのは高2。
月菜は明るく、笑顔が可愛い子。
授業は真剣な顔をして受けてるのに、休憩中は友達とちょっとふざけている。
そんな彼女に俺は惚れたんだ。
うるせぇ~な、ちょっとボーっとしてただけなのに。
え?なんでボーっとしてたかって?
それは、好きな子の部活してる姿見てたからに決まってるだろ。
後輩に教えながら、トランペットを吹く彼女。
その姿はとても綺麗だった。
青空が彼女をより引き立たせていて、目を奪われた。
俺と翔の1対1はワンタッチから始まり、オフェンスの俺が勝負を仕掛ける。
翔はディフェンスがかたくてゴールに持ち込むのが難しいけど、
一瞬をどれだけ早くするかで勝負が決まる。
キュッキュッとシューズと床が擦れる音がする。
俺の手から離れたボールは綺麗な弧を描きそのまま吸い込まれるようにリングへ。
俺たちが終わった後も喋っていると、
コロコロとボールが転がってきた。
バレー部とバスケ部はコートが隣り合わせなのでよくあることだ。
けど、このボールで俺ら男子バスケ部は取り合いをしている。
理由はただモテたいだけ。
翔はそう一言だけ言い残し練習に戻った。
この恋は俺の片思いなのか?
部活が終わり、俺はバレー部を待つ。
バレー部はあまり好きじゃないけど、月菜からのお願いだから、行かないわけがない。
別に月菜がいるわけでもない。
ただ、月菜の友達の美奈と一緒に帰ってほしいだけ。
過保護なのか、遅い時間に1人で帰らせたくないらしい。
だったらバレー部の奴と帰ればいいのに。
どうしても帰れない理由があるらしく、
俺がつっこむ話ではなさそうだから、黙って帰っている。
美奈も申し訳なさそうに帰るし。
バレー部からもバスケ部からも視線が痛い。
けど、もう慣れたしな。
美奈を送った後、1人で考えた。
もう、月菜に告白しようかな?
美奈も応援してくれてるし。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!