朝は、先生との密室から始まる。
しっかりと密室を作ってから、先生のところへ行って顔を見ながら挨拶する。
近頃話題の大人気若手俳優にも負けないんじゃないかってくらい、先生の顔立ちは整っている。
朝からそんな先生の顔を拝めて幸せです。
嘘、と口を手で押さえながら確実に真っ赤であろう顔を隠すため先生に背を向けた。
慌てて先生を振り向くが、先生はまるで聞こえていないように小ぶりなカップを口につけ湯気の上るコーヒーを啜る。
ブラック飲めるのすごいな……前ちょっともらったことあるけど苦すぎて全然ダメだった。
じゃなくて!!
先生がコーヒーカップを彼の前にあるテーブルの上のソーサーに置いて笑う。
呆れと愛おしさが混在したようなそれに、私は最初脳内に疑問符を浮かべたが、少ししてその意味が分かった。
コーヒーをちらりと見て、また私へ笑いかける。
そして私は、う、と言葉に詰まるのだ。
……朝の先生は、ほとんど触れてこないけど、他の時より一段と甘い。
しかも甘さの方向性が全く違うから、昼以降とのギャップもあり、どうしても私はこの先生に弱い。
先生が嬉しそうで、きゅんと胸が鳴った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!