第5話

5*
朝は、先生との密室から始まる。
あなた

おはようございます

しっかりと密室を作ってから、先生のところへ行って顔を見ながら挨拶する。

近頃話題の大人気若手俳優にも負けないんじゃないかってくらい、先生の顔立ちは整っている。

朝からそんな先生の顔を拝めて幸せです。
紫川先生
声出てんぞ。俺の顔見てるだけで幸せなんだ?お前
あなた

!?

嘘、と口を手で押さえながら確実に真っ赤であろう顔を隠すため先生に背を向けた。
あなた

すっ、すみません!!

紫川先生
なんで謝んだよ。別にいいけど?顔見てるだけで幸せなら俺黙っとくし
あなた

え……っ!?それこそなんでですか!?

慌てて先生を振り向くが、先生はまるで聞こえていないように小ぶりなカップを口につけ湯気の上るコーヒーを啜る。

ブラック飲めるのすごいな……前ちょっともらったことあるけど苦すぎて全然ダメだった。


じゃなくて!!
あなた

せ、先生喋ってください、私先生の顔も好きですけど声も好きですし性格だって意地悪とは思うことあってもやっぱ好きですし!!お願いしますあの……!!

紫川先生
……意地悪って分かってるくせに引っかかるんだよな
先生がコーヒーカップを彼の前にあるテーブルの上のソーサーに置いて笑う。

呆れと愛おしさが混在したようなそれに、私は最初脳内に疑問符を浮かべたが、少ししてその意味が分かった。
あなた

――言わせましたね!?

紫川先生
人聞き悪いな、お前が勝手に言ったんだろ。まあ良い感じに甘くなったよ
コーヒーをちらりと見て、また私へ笑いかける。

そして私は、う、と言葉に詰まるのだ。

……朝の先生は、ほとんど触れてこないけど、他の時より一段と甘い。

しかも甘さの方向性が全く違うから、昼以降とのギャップもあり、どうしても私はこの先生に弱い。
あなた

……なら、良かったですけど

紫川先生
おう
先生が嬉しそうで、きゅんと胸が鳴った。