第3話

3*
あなた

失礼しま――

言い終わらないうちに、ぐいっと腕を引かれ、前へバランスを崩しながら先生の胸に飛び込んでしまう。
紫川先生
お前今日寝坊したな?
左耳のそばで先生の少し尖った声が響く。

私はつい肩を震わせてしまった。
あなた

……すみません、朝は苦手で

紫川先生
はぁ。……んで?ノート、わざと間違えたわけ?
バレてる。

苦い気持ちになりながら、私は正直に答えた。
あなた

……そうです。そうしたら先生といられるかなって。朝のSHR副担でしたし、今日は先生の授業もないですから

紫川先生
……なるほどなぁ
あなた

だ……ダメでしたか?

紫川先生
いや。可愛いことするなって思った
可愛いこと!?と驚きを発しかけた刹那、耳に先生の唇が触れてきて全部消えていった。

ついばむような優しいキスや、時折這わされる舌の感触に声を漏らしそうになって口を押さえ必死に堪える。
紫川先生
ん?あー……こっちの手は空いてたか。まぁ、まだ昼休みだし見逃してやるか……
先生の独り言は、恐らく人通りがあるからということなんだと思う。

これが放課後だったら、私が恥ずかしいとか言っても問答無用で口を覆う手を外してくるから。

でも、ドキドキして何も考えられない中我慢するのは口を覆っていても結構大変で、ただキスの場所を変えられるだけでも簡単に声が零れてしまい顔が熱くなる。
紫川先生
可愛い。もっと見せろ
私にしか紡がないその声音と愛おしげな囁きに酔わされ、愛されていると実感する。

誰にも言えなくても、毎日少ししか一緒にいられなくても、幸せ。

だけど――私は、どうしてもしてほしいことがあった。