第6話

6*
あなた

それじゃあまた

紫川先生
ああ、放課後な
先生と別れ、数学準備室を出て廊下を歩く。

自分のクラスまでは結構な距離があり、さらにこの周辺はあまり使われない部屋が多く人通りがないので、私は両手で覆い隠した下で頬をゆるゆるにしていた。
おい
――不意に前方からよく通る声が聞こえてきて、その上それは聞き慣れた声だった。

先生にドキドキして高かった体温が一瞬で下がる。
あなた

……そ、そら

お前、数学準備室なんかで何してた?やけに嬉しそうな顔して出てきてたけど
小学校から一緒で今年は隣のクラスの空が、純粋に疑問、という雰囲気を漂わせて聞いてくる。

まずい。非常にまずい。空に知られたら何がなんでも別れさせられてしまう。

とりあえず話をすり替えないと!
あなた

な、なんで男バスの空がここにいるの?朝練は?

今日ない。昨日も一昨日も試合だったから。で、なんで?
追求をやめるどころか、どんどん迫ってくる空。

くそっ、こいつのこういうとこに救われる時もあるけど嫌いだ……!!今みたいな場合に限っては嫌いだ……!!
……あそこって、紫川先生が管理担当だったよな。そもそもどうやって入ったんだよ
なんの前触れもなく先生の名前が飛び出し、大袈裟に肩が跳ねる。

ますます空が不審そうな目になったため、私は急いで言った。
あなた

よ、用事があって!ほら、昨日提出の紙があったでしょ、あれ出し忘れてたから出しに言ってたの!それだけ!

紙?……あー、あったな確かに
あなた

でしょ?

じゃあ嬉しそうだったのは?
あなた

それは…………先生が好きだから!

苦し紛れに絞り出した答えは、『片想い』という設定にして先生に本気で恋する生徒を演じ乗り切るという無理矢理な発想によるものだった。