第7話

7*
……は?
空は目を丸くした。

彼から言葉を重ねられる前に、勢いで畳みかけていく。
あなた

無理って分かってるんだけどさ、先生のこと好きなんだよねほんとに!だから提出のためとはいえふたりきりで嬉しかったというか、ああ幸せな時間過ごせたなっていうそういう気持ちです!た!

後から過去形にしたら変な日本語になったが気にしない。その程度今は構ってられない。堂々とするんだ。
…………
空は、ぽかんとした表情で私を見つめ、正面から両肩を強く掴んできた。
諦めろ。マジで叶わねえから
あなた

っそ……そうだけど、想うくらい自由じゃん!

バーカ、想うことが無駄だって言ってんだよ。その辺の奴にしとけよ
ぐ、と肩を掴まれている手に力がこもる。
……オレとか
あなた

…………え?

一瞬、何を言われたのか分からなかった。

だって空から好かれてるなんて、考えてもみなかったことで。

聞き間違いじゃないかと疑うくらいには、空を異性として意識していなかった。

――なのに。
好きだ。中学生の時から、あなたが好きだった
『男』の顔で、真剣な声でってくるから。
あなた

……っ

身体中が一気に熱を上げ、私は俯いて唇を固く閉じた。

やばい、心臓バクバクいってる。

空はしばらく何も言ってこなかったが、その間も視線だけは感じた。
いつからあの先生が好きなんだ?この前好きな奴いないって言ってたじゃん
あなた

……いつから……

いつからだろう。最初は確か「かっこいい」っていうのと、「クールに見えて優しいな」っていう印象だった。普通に、“先生”に対して抱く感じの。

それが『好き』に変わっていったのは――
あなた

……気付いたら、かな

先生と毎朝ふたりで過ごしてくうちに、自然と。

付き合ってからは放課後も一緒にいるようになって、朝との違いにびっくりしたけど、それでも想いは消えなくて。

恋してるんだなって……好きなんだなって。
……でも、オレのがお前のこと好きだから
あなた

…………

返す言葉に迷って、黙っているとそっと抱きしめられた。
明日返事して。……好きだよ
耳元で囁かれ、どきりとしつつも依然黙り込む。

去っていく空の背中を見送って、私は来た道を引き返した。