第8話

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数学準備室のドアを開け、先生の前に姿を現すと、先生は少し驚いたような顔をした。
紫川先生
どうした?忘れ物でもしたか?
あなた

……告白されました。空に

先生が目を見開く。

そして、その目をスッと細め、「……それで?」と先を促してきた。
あなた

もちろん断ります。私が好きなのは先生です。……でも、ドキドキしてしまいました

心臓のあたりの服をきゅっと握りしめる。
あなた

これって浮気ですか?

声が震えた。目頭が熱くなって、大好きな顔がぼやけてくる。

浮気じゃないよって言ってほしい。

先生以外の人にドキドキしたくない。

先生だけが、好きなんです。

――呆れないで。捨てないで。
紫川先生
……来い
コーヒーカップを乗せたソーサーをテーブル奥へと遠ざけて、先生が私を呼ぶ。

私はその通りに歩み寄って、先生の足の間に膝をついて先生に抱きついた。
紫川先生
……なんて言ってほしいんだ?
私の背と後頭部に手を回し、軽く抱き寄せた先生が問うてくる。

先生に言ってほしいことなんて山ほどあるけど、先生の腕の中にいて浮かんだ言葉は、一つしかなかった。
あなた

……好きって、言ってほしいです