第32話

言いたい放題フェスティバル開幕のお知らせ
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2020/11/14 06:48
後日
まだ超能力の真実は表沙汰になっていないが、不適合者の私が超能力を使ったことを知っている生徒たちがどんどん情報を拡散していき、学園内で私のことを知らない人はいないほどになってしまった
かなり浸透してしまっているようで、私は計画実行をするこの日まで、ずっと学校に行かないようにしていた
旦那様には『気分が悪い』だとか『今日は不適合者は登校しなくていい』とか、バレそうな言い訳で何とか躲してきた。バレなかったのは偏に・・・・・・私に興味が無いからだろう
そんな訳で、数日ぶりにようやく登校してきた私がいの一番に向かったのは、入学式の行われたホールだ
全校生徒が入れるように設計されていて、前方にあるステージ上からホール全体を見渡してみると、入口であるドアが遠く感じられた
こんなに広かったのか。思っていた以上だな
教師
本条さん! あと15分くらいで全員揃うと思うから!
本条 瀬奈
本条 瀬奈
わかりました。ステージ袖で待機しておきます
あの日、私に付き添ってくれていた男性教師が、ステージ袖から私の名前を呼んだ
素直に返事をし、私はステージ脇にある、出演者が待機できる袖に戻る
さて、この一連の流れで私が今から何をしようとしているかお察しいただけただろうか
今までの無情な扱い。影口を山ほど叩き、罵倒しては嘲笑っていた奴らへの仕返し報復
興奮のあまり、にやりと口角が釣り上がる
さあ、自分たちが虐げていた存在が自分たちよりも秀でていると知った時、彼らはどんな顔をするのか、楽しみにしていよう





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理事長
えー、君たちも既に知っていると思うが、先日、学園にて自殺未遂の事件が発生した
まず理事長から挨拶をすることをお願いしていたため、ただいまステージ上に立ち、演台の前で喋っているのは理事長だ
私はその様子を、ステージ袖から見守っていた
理事長の声で、ザワザワと騒がしくなるステージ下の生徒たち
・・・・・・まあ、私は今来ていないし、そうなるなも当然か
理事長
だが未遂で終わったのには、とある1人の生徒の尽力あってのことだ。これも、皆知っていることと思う
ところどころから「知ってるー」とか、「あれって、本条先輩だったんだよね」といった様な声も聞こえてきた
多分あの場にいた生徒だろうな・・・・・・グラウンドには70人くらいはいたし、学年もバラバラっぽかった。確かにそれならこの浸透スピードも納得
うんうんと頷いている間にも理事長の話は進んでいく
理事長
不適合者だと言われていた、高等部1年の本条瀬奈さんだ。彼女は今、ここにいる
何故か誇らしげな声色で言う理事長
だが生徒たちはそんな理事長の様子を気にする事はなく、ただ理事長の言葉だけに反応した
今までよりも騒がしくなり、もはやノイズの塊
これ、静かになるのだろうかと少し不安になっていると、理事長がマイクに向かって一度咳払いをした
その直後、ほんの少し前までの喧騒が嘘かのようにホール内が静まり返る
満足そうに頷いた理事長は、私に向かって小さく手招きした
出てこい、という合図だ
やっと言いたいことを言えれる。この日を心待ちにしていたのだ
きゅっと唇を固く結び、堂々と胸を張って、私はステージ袖から姿を現した

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