第13話

読めない行動すぎて理解不能です
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2020/11/01 09:20
亡くなった女子生徒と親しかったらしい生徒が、顔を涙と鼻水でグチャグチャにし、惨めな状態のまま私に向かって叫んだのだ
ここで言う鬼が、私のことを指しているのは一目瞭然
遂に不適合者から鬼という変なジョブチェンジを果たしてしまったのか・・・・・・と遠い目をしていると、その女子生徒は更にまくし立てる
女子生徒 2
クラスメイトが死んだのに、悲しくないの?!
よくそんなこと言えるよね。あんたには人の心ってものがないの?!
ぴくりと、肩が跳ねた
・・・・・・自分の発言にはよく気を遣うことを全力でおすすめするレベルで自分に返ってきたな、今
特大ブーメランとはまさにこのことを言うのだな、と実感する
少し離れた席に座る、私を鬼呼ばわりした女子生徒に視線を移した
緊張と不安で張り詰めた空気の中、私は先程と変わらない声色で、平然と言い放つ
本条 瀬奈
本条 瀬奈
なら聞くけど。あなたは私が死んで悲しむ?
女子生徒 2
そんなわけないじゃん! 不適合者の為に涙流すとか、有り得ないし!
怒りのせいで思考がままならないのか
クラスメイトが死んでも悲しまない。それがおかしいと彼女ははっきりと断言した
あの子にとって、私も紛れもないクラスメイトになる。ならもし私が死んだ時、悲しまないというのは、またおかしな話だ
本条 瀬奈
本条 瀬奈
そう。私はあなたのこと、クラスメイトと思ってはいたけど、あなたはそう思ってなかったの。何か判断基準が違うのか知らないけど、発言に一貫性が無いのは確かじゃない?
女子生徒 2
っっ!
言葉に詰まったらしく、何も言い返せないでいる女子生徒
これで不適合者だからという理由を持ち出してきたら笑うけど、まさかそんな事しないでしょう
適合者と不適合者ではなく、クラスメイトとしての話をしたのだから
発言した本人が、次は不適合者だからと言い張るならば、私はもういっそのこと、超能力を使ってその身に思い知らせるわ
女子生徒 2
でっでも!
まだ言うか───────と、呆れ混じりのため息をつく
だが、私がもう一度反論しようとする直前、透き通った声が教室に響き渡り、私の口を塞いだ
宮澤 ましろ
宮澤 ましろ
ん〜、こればかりは、私は瀬奈ちゃんに同意かなっ!
がたんと、後ろから音がし、それと同時に私を擁護する言葉が聞こえた
私のことを初めて下の名前で呼んだ人──────それは、ずっと私に嫌がらせをしてきた宮澤ましろ
ばっと後ろを向くと、腕をお腹の前で組み、少し怒りを含んだ笑顔を貼り付けるましろが立っていた
女子生徒 2
な・・・・・・っ、どうして? ましろちゃんは不適合者の味方をするの?!
宮澤 ましろ
宮澤 ましろ
味方っていうか・・・・・・普通に考えて、君の方が言ってることおかしいと思って。瀬奈ちゃんの言う通り、一貫性がないよ?
えーと、美代ちゃんだっけ? その子が亡くなったのを瀬奈ちゃん達のせいにしたいだけなんでしょ?
現実逃避するなら他所よそでやってくれないかなぁ?
口元は緩やかな弧を描いているのに、目は全く笑っていなかった
寧ろ、『黙れ。うるさい』と表現しているように見える
けど、それが更に私の混乱を深めていた
どういう風の吹き回し?
ましろに・・・・・・適合者にとって、どんな状況下であろうと、不適合者を庇うような真似をするのはメリットが一切ない
単純な正義感で行動するような人ではないことはわかってる。今まで私に言ってきた嫌味や、典型的な嫌がらせを見れば明白だ
なら何故、私に代わって反論し、加えて怒りを露わにしているのか
理解できない。できなさすぎて、私の思考回路はオーバーヒート
不可解な行動をしたましろは最後に、にこりと天使のような笑みを浮かべ、静かに自分の席に着いた
例の女子生徒は何か言おうとしたが、周りの生徒に止められ、結局言えずじまい
あの生徒のことなんかどうでもいい。今はましろに、行動を起こした意味を教えてもらう。それが先決だ
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ねぇ、まし──────
くるりと後ろを向き、尋ねようとしたところで、校内放送が流れた
大音響のせいで声はかき消され、ましろは既にうつ伏せで寝ていた
・・・・・・校内放送が流れた時が着席の合図。もちろん、無言で
誰も口を開くことがない状況で人目を憚らずに質問するのは流石に無理だ。後で聞くしかないと諦め、私はそのまま椅子に腰を下ろした





けど、その後ましろは急な腹痛で早退してしまい、結局何も分からないまま授業を受けることになった
ましろは私を馬鹿にしていた。私の記憶違いなんて事はありえない。なのに今日に限って、どうして・・・・・・
・・・・・・ましろは、一体何を考えているの?

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