第33話

フィナーレはまだまだ先です
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2020/09/20 03:40
理事長は私が登場すると、反対側の袖に入っていった
これからは、私の独壇場ということか
学園のトップから許しを得たのだ。言いたい放題言ってやろう
演台の前までゆったりとした足取りで歩き、台の上に置かれたマイクを調節する
台本も何も無い。ただ、私が言いたいことを言うだけ
たったそれだけなのに、以前と違って、生徒たちは全員、私を真剣な面持ちで見ていた
・・・・・・ここまで注目されたことなんて、本条家の恥さらしとして言われた時以来か
けどその時と決定的に違うのは・・・・・・彼らの眼差しが、私を侮蔑の対象として見ていないこと
散々敵意を向けられていた相手から初めて受ける視線に、少し新鮮さを感じる
まあ、今更くるりと手のひら返しをされても、無駄だけどね
本条 瀬奈
本条 瀬奈
どうも。本条瀬奈です
マイク越しに伝わる私の声は、どこまでも清々しいものだった
全てから解放された声。もう何にも囚われないと、私の世界に皆を誘う声
さあ、有無を言わさずに・・・・・・言いたい放題言ってやろうじゃない
本条 瀬奈
本条 瀬奈
まず私の素性についてお話しましょう。私、転生者です。
私の前世はこの世界のパラレルワールドで、誰もが超能力を使えました。『種』なんて植え付ける必要もなく
初っ端から衝撃的なカミングアウトをされ、一周まわって何も言えない生徒の面々
それは生徒だけに限らず、事情を説明されていない一部の先生達も、呆然と私を見つめていた
構わず私は話を続ける
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ですので勿論、私も超能力が使えます。しかも五種類。目の前で見た方もいらっしゃいますよね?
私が『飛行』を使って空を翔び、『水』のクッションを作り出して女子生徒を助けたことを
徐々に落ち着いてきたのか、少しずつ声が溢れ出し、それはホール中に轟く叫声へと成り代わった
ふぅ・・・・・・まあこうなるとは予想していたけど、ちょっとうるさいな
私は敢えてマイクの頭に指を近づけ、意図的にハウリングを起こした
きーーーんと、耳障りな音が響き渡る
その瞬間、注目は再び私に集中し、同時に全員の口が閉ざされる
うん。やっぱりハウリングは使える
気を取り直し、積もる話はまだまだあるのだと言いたげに、口を開く
本条 瀬奈
本条 瀬奈
それからもう1つ。適合者の方々に植え付けられた『種』の中にはアストロータという主成分になるものが含まれています。こちらの世界で言う『超能力の素』ですね。
それのお陰で超能力は使えるのですが、副次的影響がありまして。超能力を使う毎にそれ相応の寿命が削られるのでお気をつけを
衝撃的なカミングアウト3回目。しかも自分の身に起こっている事であり、そして命に関わる事だとやっと理解したらしい生徒たちは、一斉に批判の声を上げた
男子生徒 3
おい! どうして黙ってたんだよ!
女子生徒 2
私たちのこと殺したいわけ?!
怒りのあまり、自分の考えもままならない様で、口々にぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる
まったく。これだから適合者は嫌なのよ
ふっと鼻で笑い、そして冷酷に突き放した
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ずっとずっと、嘲笑われ、虐げられ、罵倒されて・・・・・・そんな扱いを受けておきながら、適合者の為だけに自分の秘密を明かすなんてこと、やりたくなかったからですよ
にっこりと、空前絶後の最上級の笑みを浮かべる。ただし、口周りの表情筋以外は微動だにしていない
まるで私は、彼らを虫以下の存在として見ているような目をしていただろう
この本条瀬奈という人間にとって、自分たち適合者が持つ超能力は取るに足らないものであることを理解したのかは分からない
ただ断言出来るのは、自分たちがしていたことが自分たちに返って来たということ。これについては、私に罪などない
それはこの場にいる全員が分かっているらしく、誰も言い返すことは無かった
なら最後に、言いたいだけ言ってやりましょう
本条 瀬奈
本条 瀬奈
でも私は、超能力が原因で死んでいく人を見たくなかったから・・・・・・こうして秘密を理事長にお話したんです。同じ人間として、真実を話さなければならないと。
それに、このことを伝えることで、科学への見方が変わり、不適合者への扱いにも変化が生じると気づいたから
これが本当に言いたかったこと
たったこれだけ。こうすれば、不適合者が苦痛に耐える毎日を送る必要もなかった
あの女子生徒が、自殺未遂を犯すなんて、しなかったかもしれない
過去を変革することはできない。ならば、未来の為に動け
本条 瀬奈
本条 瀬奈
この世には稀ですが、超能力の素質を持たない人がいます。それでも同じ人間に変わりはありません。そうですよね?
私は生徒たちに向かって問いかけるが、返事をする者は誰一人としていない
論破されたからか、それともやはり寿命のことが衝撃的だったのかは知らないが、私はスルーして話を続ける
本条 瀬奈
本条 瀬奈
私はこの秘密を明かしました・・・・・・ならば、その対価になるような行いを、心がけてください。私が言いたいのはそれだけです
最後に懇請の言葉で締め、一歩下がって一礼する
出てきたステージ袖へと向かう途中、ぱらぱらと拍手が起こり始め、それは次第に大きくなり、姿を消す頃には大歓声の飛び交うものになっていた
ステージ袖に着いた瞬間、やっと終わったという脱力感から、膝から崩れ落ちてしまった
・・・・・脆弱だな、私
忙しいのはこれからなのに
それでも、私の胸を渦巻く達成感は、今までに感じたことのないほど大きなものだった
もう人生に悔いはない・・・・・・そう言っても過言ではないくらいに
でも、私にはまだやるべき事があるから
この秘密を墓まで持っていかないのであれば・・・・・・彼らが私の演説に心を打たれたのであれば
私もその対価をお返ししなければならない
背後から沸き起こる拍手の嵐に陶酔しながら、私はゆっくりと立ち上がり、瞳を閉じた

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