第31話

本音ってやっぱり大事
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2020/09/15 13:38
本条 瀬奈
本条 瀬奈
──────不適合者への扱いを見て、この世界は勝手に破滅してしまえばいいと思ったからです。同じ人間なのに、超能力が使えないというだけで蔑まれる。
自分の寿命が削られているとも知らずに。アストロータの真実も分からないのに。馬鹿な奴らだと。自滅すればいいと思った・・・・・・っ!
つい感情的になってしまい、最後は声を荒らげてしまった
やりすぎた、と思い、すぐさま口を手で塞ぐが、後の祭り
どうしよう・・・・・・結構、酷いことを言ってしまった気がする
ちらりと理事長の顔色を伺うが、何一つ察せない、微妙な顔をしていた
笑ってもないし、怒ってもいない。かといって無表情であるかと問われると、そうでもないような・・・・・・
読めない理事長の反応に冷や汗をかくが、私の心配は、次の瞬間に音を立てて崩れた
理事長
そうか。よくわかった。世界中の首相に掛け合って貰えるように私から日本のトップチームに進言しよう
本条 瀬奈
本条 瀬奈
え・・・・・・っ?
さらりと、隣の家に折菓子持って行く、といった様なノリで言ってのけた理事長
対する私は、深刻に考えていた懸念が取り越し苦労だったことが未だに信じられず、嬉しさと放心が混じった声を発した
ちょ、ちょっと待って
私からお願いしておいてだけど、『それくらい朝飯前です』みたいに言われても・・・・・・ちょっと困る。拍子抜けもいいところだ
それに、どうしてあの理由を聞いて了承してくれたのかがわからずに首を捻っていると、私がイマイチ理解出来ていないことに気づいたのか、理事長は補足した
理事長
私の超能力は『読心』。脳の表層で考えていることなら全く問題なく読み取れる。
その代わりに疲労が凄まじいから、日常的には全く使っていない。だからこの歳まで生きれたんだろう
どこか得意げに話す理事長に、私は一拍置いて言葉の意味を噛み砕いた
つまり、私が頭の中で色々と考えていたことも、懸念も、全部バレてた・・・・・・ってこと?
私が嘘を言うか、本当のことを言うか。その二択で迷っていたことも分かっている。そのうえで、私に協力することを決めてくれた
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ありがとう、ございます・・・・・・っ
戸惑いを覚えつつも、どうにか感謝の言葉を口にする
少し、目の縁が熱くなったことを隠すように、私は更なる提案をすべく、声を張り上げた
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ただもう1つ、頼みがあるのですが
理事長
なんだ? まだ何か、他に情報があるのか?
本条 瀬奈
本条 瀬奈
いえ・・・・・・話は以上ですが。個人的に、少しやりたいことがありまして
先程の自慢げな顔から一転し、不思議そうに私を見つめる理事長に、私はいたずらっ子のような笑みを浮かべて、これからの計画を話し始めた───────

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