第29話

相応の代償と
603
2020/09/15 13:33
教師
本当に、どこにも怪我はないんだな?
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ええ、この通り
教師
ならいいんだが・・・・・いくらなんでも無茶をしすぎだ。女一人で同じくらいの背丈の人間を受け止めるなんて
本条 瀬奈
本条 瀬奈
それしかいい方法がなかったので。水のボールだけでは5階から落ちてきた人の勢いを殺しきれないから仕方なく
教師
いや、そうじゃなくてだな・・・・・・
呆れ混じりのため息をつきながらも、感心したように顔を綻ばせる30代くらいの見かけの男性教師
今、私は保健室で治療を受けている
軽い打撲があったのと、全身びしょ濡れになったのとで、後から駆けつけた先生たちに強制連行されたのだ
私が不適合者だと知っているはずなのに、それについての質問は一切せず
まあ一から説明するとなると保健室では色々と障害があるからだろう。そういう詳しいことは、公式的な場でするのが最良だ
私は体操服を持っていなかったため、同じ背丈くらいの生徒にジャージを借りて着ている。腕に治癒の超能力をかけてくれた養護教諭の先生に感謝しつつ、付き添ってくれた男性教師に尋ねた
本条 瀬奈
本条 瀬奈
それで、あの女の子は
教師
ん? ああ、本条のおかげで無傷だと。ただ念の為、医療機関に入院して精密検査しなきゃならないってことで、搬送されたよ
本条 瀬奈
本条 瀬奈
そう、ですか・・・・・・よかった
ほっと安堵のため息を吐き、胸を撫で下ろす
結構荒い手を使ったが、ノープランだったので許して欲しい
教師
聞きたいことは山ほどあるが・・・・・・まず理事長から話が来るだろうから、心の準備はしておくようにな
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ええ、いつでも大丈夫です
教師
・・・・・・噂通りというか。まあ、頑張れよ
意味深な言葉を言い残し、私が落ち着いてきたのを確認してから男性教師は部屋を出ていった
1人、ぽつんと取り残される私
元々1人が好きだし───ずっと1人だったのだが───別に寂しいとも思わないので、私はベッドの縁から腰を上げ、ぐーっと伸びをする
どこも痛くないし、やっぱり治癒能力って凄い
・・・・・・それと引き換えに、寿命は削られていくけど
そっと、私は自分の手のひらを見つめ、握ったり開いたりした
自分の知らないところで、自分の寿命が減っていっていると気づけば、彼らはどんな反応をするだろうか
迷っている訳では無い。もう超能力を、沢山の生徒たちがいる目の前で使ってしまったから言い逃れなんてできっこない
ただ・・・・・・どうしてそれをずっと黙っていたのかと、罵られることは、少し怖いと思うだけ
それは紛れもなく私の責任だ。それはちゃんと私が背負わなければならない
・・・・・・迷うな。決めたことは貫け。そうしないとまた、命が失われてしまうから
ぎゅっと、人知れず拳を握りしめ、決意を新たに保健室を飛び出した

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