呆れ混じりのため息をつきながらも、感心したように顔を綻ばせる30代くらいの見かけの男性教師
今、私は保健室で治療を受けている
軽い打撲があったのと、全身びしょ濡れになったのとで、後から駆けつけた先生たちに強制連行されたのだ
私が不適合者だと知っているはずなのに、それについての質問は一切せず
まあ一から説明するとなると保健室では色々と障害があるからだろう。そういう詳しいことは、公式的な場でするのが最良だ
私は体操服を持っていなかったため、同じ背丈くらいの生徒にジャージを借りて着ている。腕に治癒の超能力をかけてくれた養護教諭の先生に感謝しつつ、付き添ってくれた男性教師に尋ねた
ほっと安堵のため息を吐き、胸を撫で下ろす
結構荒い手を使ったが、ノープランだったので許して欲しい
意味深な言葉を言い残し、私が落ち着いてきたのを確認してから男性教師は部屋を出ていった
1人、ぽつんと取り残される私
元々1人が好きだし───ずっと1人だったのだが───別に寂しいとも思わないので、私はベッドの縁から腰を上げ、ぐーっと伸びをする
どこも痛くないし、やっぱり治癒能力って凄い
・・・・・・それと引き換えに、寿命は削られていくけど
そっと、私は自分の手のひらを見つめ、握ったり開いたりした
自分の知らないところで、自分の寿命が減っていっていると気づけば、彼らはどんな反応をするだろうか
迷っている訳では無い。もう超能力を、沢山の生徒たちがいる目の前で使ってしまったから言い逃れなんてできっこない
ただ・・・・・・どうしてそれをずっと黙っていたのかと、罵られることは、少し怖いと思うだけ
それは紛れもなく私の責任だ。それはちゃんと私が背負わなければならない
・・・・・・迷うな。決めたことは貫け。そうしないとまた、命が失われてしまうから
ぎゅっと、人知れず拳を握りしめ、決意を新たに保健室を飛び出した
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。