白髪混じりの婦人は、向かい側に腰掛けた私から視線を外すことなく言った
対する私は、がちがちに緊張している状態
どうしてここが分かったの・・・・・・?
まさか、顔を見られただけで私だと見抜いた?
これだけは聞いておきたい、と失礼を承知で口を開く
私の真剣な質問に、ほぅっと感嘆の息をつき、女性は一拍置いて質問に答えた
控えめに私の髪を指さしながら説明する
なるほど・・・・・・確かに、オレンジ色に近いこの髪色では目立つか
それに私、意外と有名人だったんだな
名家に生まれた不適合者だからというのもあるだろうが、割と特徴的な髪色も噂になっているらしい
納得したように頷き、再び私は面持ちを変えた
私の表情の変化を悟り、婦人もすっとその顔から笑みを消した
深々と頭を下げる婦人を私は慌てて制する
今までそんなことされた事なんてない・・・・・・それに、当然のとこをしたまでだ
・・・・・・今まで出来なかった分を
それでも顔をあげない婦人に、どうしようかと戸惑っていると、ふと先程の婦人の言葉を思い出す
このまま居心地の悪い状況を保ってもいられず、なんとか話題を変えようと新たに質問した
やっと顔を上げてくれた婦人にほっと胸をなでおろし、再度質問を重ねた
苦笑しながら婦人から言われ、そこでようやく思い出した
そういえば私、あの時硝子細工を壊したんだった
本当なら弁償しなければいけない物。恐らくはお店で死者を出さなかったことに対する謝礼なのだろう。有難く受け取っておこう
お礼を込めて、ぺこりと一礼する
婦人は一瞬朗らかな笑いを口元に灯したが、直後ふっと表情を元の真剣なものに戻す
それが合図だった
私の体をしばりつけるかのようにぴりっと空気が張り詰めた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。