第28話

悲鳴の元凶
637
2020/09/15 13:33
野次馬根性で見に行こうとする生徒たちの群集をかき分け、階段を駆け下り、昇降口から外に出た
フォーマルシューズのまま、入学式が執り行われたホールの方向まで疾走し、そこから繋がっている初等部への廊下を通ってグラウンドに到着する
グラウンドにはまばらに生徒たちが集まっていて、誰もが初等部の校舎の屋上を見上げていた
息も絶え絶えに、私も同じように屋上へ目を向ける
5階建ての初等部校舎。その屋上には、1人の女子生徒の影が伸びていた
本条 瀬奈
本条 瀬奈
ちょっと・・・・・・
彼女の姿を視界に入れたまま、唖然と口が半開きの状態で譫言のように、そう零すことしか出来なかった
まるでこの世の終わりが目の前に差し迫っているかのように虚ろな顔で、今にもそこから飛び降りてしまいそうな雰囲気を漂わせている
白い制服からして中等部の子だ。よく学校に来れたなと思う程、彼女の様子は誰が見てもおかしかった
瞬間的に、私の頭の中に二文字の言葉がよぎ
──────────自殺
男子生徒 4
おい・・・・・・誰か飛行とか使えるやついねーのかよ!
女子生徒 3
無理なの。今日は飛行とテレポートを使える生徒たちは皆・・・・・・校外実習なのっ!
先程、悲鳴を『共鳴』を使って知らせたらしい女子生徒が、校舎の真下で上を見上げながら悔しそうに歯ぎしりする
だからましろは今日、学校にいなかったのか・・・・・・
そう納得する暇などなかった
直後、女子生徒の口からはっきりと、予想していた言葉が飛び出したから
女子生徒 3
あの子、不適合者だからもう生きているのが嫌だって言って・・・・・・あそこから飛び降りる気なの! お願い、誰か助けて・・・・・・っ
涙声になりながら、悲痛さの滲む願いが耳朶に染み渡る
瞬きをした隙に、命を繋いでいる『鎖』が切れ、無残な姿へと成り果てそうな女子生徒
普通であれば、先生を呼びに走るなり、落下地点にクッションになりそうなものを創り出すなり、手を打つだろう
だが、誰も助けようとはしなかった
・・・・・・不適合者だという、戒めの肩書きが、適合者達の判断を躊躇わせていた
目の前で1人の命の灯火が消えようかとしているのに、誰一人として動こうとせず、ただずっと、屋上を見つめているだけ
せめて、同じように屋上にのぼって・・・・・・なんてことをすればいいのに、それすらしない
私が真実を話さなかったせいで、救えるはずの命がまた失われていく
そんなことさせてはいけない
周りに対する腹立たしさと、自分の愚かさが、私の体を突き動かした






気がつけば、私の足は地に着いてなんていなかった
私が地面を蹴りあげたとほぼ同時に、女子生徒の体から力がふっと抜け、その身体にかかった重力に逆らうことなく地面へ真っ逆さまに落ちていく
女子生徒が遂に落ちたからか、或いは私が飛んだことへなのか
ただ、甲高い悲鳴と、声援にも似たような叫声が背後で放たれる中、私は彼女を救いたい一心で、翔んだ
視界に入る景色がスローモーションのように見える中、私はもう少しで届きそうな彼女の体に手を伸ばす
ぐっと、下から掬い上げるように彼女を受け止めると、それと同時に私の真下には大きな水のボールが構築された
さすがに上から意識のないまま落下してきた人間を受け止めて、平然といられるのは無理だ
だから────────
飛行の力を弱め、準備が整ったと言わんばかりに彼女を抱き抱えたまま
殺せなかった彼女の勢いに任せ、水のボールへダイビングした

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