俺達は夕食を終え夜の街をブラブラと歩いた。
気付くと深夜0時を回っていた。
この時間になると店は殆ど閉まっていて人通りも少ない。
まるで2人だけの世界の様だ。
ちひろの後について行くとホテルの前で立ち止まる。
俺が言い終わる前に強引に手を引っ張っり部屋に入る。
どうしたんだちひろ?
ちひろはもじもじしながら照れてる。
うん、なんか可愛い。
そう思って居るのも束の間突然、ちひろは服を脱ぎ出した。
すまん、ちひろ昨日やりました、じゃなくて。
昨日の今日で俺は、緑子とちひろを重ねて見てしまっている。
こんなモヤモヤした気持ちじゃ抱きたくないんだ。
ちひろが珍しく声を張り上げて怒鳴る。
でも、その瞳は怒りではなく悲しそうだ。
ちひろは俺に背を向けベットに横になった。
俺はソファに寝転び、天井を見つめていた。
何してんだ俺。
折角、ちひろが機転を効かせて楽しかったデートが全部台無しだ。
でも、俺はやっぱりこんな気分のまま、ちひろを抱けない。
ごめんな、ちひろ。
ちひろは泣いているのか?
時折、鼻をすする音が聞こえる。
こんなにすぐそばに居るのに、距離が遠い。
何もしてやれない自分が苛立だしくて、情けなくて、悲しい。
俺も静かに泣いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。